第19章 傷痕
月島君がボールを軽く上げる。
きっとまた、さっきと同じ様に打ってくる。
そんな予感をさせる、勢いを押さえたボール。
そして、予感通り・・・
・・・来た!
弱めに打っている為か、ボールの回転は少なく、予想した軌道よりも左に流れている。
影「代われ!!」
影山が声を上げ、さっき言われた通り私は影山がいた方へと体を避けた。
刺し込まれたサーブは、影山がちゃんとレシーブで拾い上げてくれた。
影「城戸!!」
私は2歩程足を進め、トスを上げる準備をする。
影山に上げたいけど、ここは体制が整ってる・・・
『縁下先輩!!』
縁「オッケー!」
縁下先輩へのトスはネットからボール3つ分!
影山の言葉を思い出し、その高さへトスを上げた。
重く乾いた音をさせながら、縁下先輩が相手コートにスパイクを打つ。
田「オッラャァァァ!!」
ギリギリの所で田中先輩に拾われてしまう。
菅「日向!」
“ 菅原さんが日向にトスを上げたら、ブロック着くのはやめて、あえてノーマークにしましょう。そして俺達全員で・・・必ず城戸に繋げる。お前は何度でもトスだけに集中しとけ! ”
その言葉通り、誰もブロックを飛ばない。
“ 日向はフェイントはして来ない。でも、万が一の為に俺はネット際に残ります。だからフェイント以外のが来たら・・・ ”
澤「必ず拾う!」
そう叫んで、澤村先輩がレシーブする。
自分へと繋がれたボールから目を離さずに空気の流れを体で掴む。
影山が動いた!
そう感じて、さっきより少し早めのトスを送った。
さすがに影山にはブロックが2枚着く。
でも、そんな事はお構いなしに力技で影山はスパイクを打ち込んだ。
日「ぶぎゃっ!!」
それは、日向君を直撃し、弾かれ、コートの外へと落ちていった。
ーピッ!ー
!!
まずは1点取り返した!
嬉しさのあまり、思わず大きく振り返る。
背後を守ってくれていた先輩達は、そんな私を見てニッと笑う。
影「まだまだこれからだ」
そう言って私の肩をスパンッと叩き、影山がサーブを打つため移動した。
痛ったぁ・・・
影山ほんと加減ってものを知らないな・・・
ジンジンとする肩を軽く押さえ、私は前を向いた。
影山の殺人サーブで、呆気なく同点まで持ち込む。
菅「日向!山口!落ち着け!来るぞ!!」