第19章 傷痕
影山がそう言うと、澤村先輩がウンウンと頷き続きを話すことを了承する。
影「月島のサーブ、まだ2球しか見てないから確信は出来ませんが、恐らくセッター潰し・・・だと思います」
言いながら影山が私を見る。
影山はもちろんの事、澤村先輩も私が昨日話したからセッター潰しにあった過去は知っている。
私は影山に頷いて見せ、話しても大丈夫だと、それを合図とした。
影「城戸は過去にセッター潰しにあって、それが元で敗退した事があります。月島がそれを知っているのか、偶然そういう風になったのかもわかりません。でも、次も城戸を狙ってくるなら回避する事は出来ます」
影山の言う通り、月島君が私を故意的に狙っているとしたら、次もまた・・・
『待って、影山がいい考えがあるって言ってくれてるけど、でも、いまこんな風に集まって話してるから、それってバレ、モガっ・・・』
影「泣き虫は黙って聞いてろ」
言い終わる前に手で口を塞がれ、私はそれ以上、何かを話す事は出来なかった。
な、泣き虫ってなに!
私泣いてなんかないよ!
それについて反論したくても、頭ごと抱えられて口を塞がれてるから、モガモガするだけで言葉にはならない。
澤「それで、考えっていうのは?」
影「はい。立ち位置的にはさっきと同じで。ただ、月島が城戸を狙ってきた場合、その時は俺が城戸と場所を入れ替わる。カットしたら城戸の方に上げればいいだけなんで、後は城戸がトスを上げれば、月島のやりたい事は崩せるかと」
澤「城戸さんと入れ替わる・・・か」
縁「上手いこと行くといいけど・・・」
澤村先輩と縁下先輩が少し考える素振りを見せ、私もその影山の作戦をイメージしてみる。
上手く行けば、の可能性と同時に、失敗するかも?という不安も浮き上がってくる。
だったら、私がファーストタッチで上げれば・・・
『あの、私にボールが来るって確信して心構えしてれば、受けることは頑張れると思います。そしたら私以外がトスを上げるって言うのは?』
影山の腕から逃れ、苦し紛れに言ってみる。
澤「確かにそれも一理あるけど、それじゃダメだって影山の目が言ってるよ?」
苦笑を返しながら、澤村先輩が影山を見た。
影「城戸、ここはお前がトスを上げなきゃ意味がない。だから、いつまでもウジウジ泣きっ面を晒してないで、言われた事をやれ」