第19章 傷痕
~影山side~
なんだ・・・
今のサーブの後から、城戸の様子がおかしい。
明らかに動揺を見せ、顔色が変わった。
月島は菅原さんからギリ失敗かと聞かれ、打ち損ねそうだったと答えた。
アイツの今までのサーブからしたら、本人がそう答えたんだし、そうなのかも知れない。
けど。
じゃあ城戸のこの変化は・・・なんだ?
ーピッー
ホイッスルが鳴り、月島からのサーブが打たれる。
落下点は・・・城戸の前?!
『あっ・・・』
自分のいる手前に落ちると見えたと同時に、咄嗟に城戸はアンダーで腕を伸ばす。
しかし当たり場所が悪かったのか、城戸が受けたボールは横に弾かれコートの外へと流れる。
木下さんがフォローに入るも1歩届かず、コート外の床へと落ちた。
『ゴメンなさいっ、私のせいで!』
木「平気平気!今のもドンマイだ!」
そんなやり取りの中で、更に城戸の様子が変わっていくのが分かる。
今のも月島の打ち損ねか?
チラリと横目で月島を見る。
・・・?!
アイツ・・・笑ってやがる。
普段からポーカーフェイスを気取る月島が、うっすらと口元を緩ませている。
まさか、城戸を狙って打ってるのか?!
女だからか?!
それともセッターだから、ファーストタッチを狙っているのか?!
?!?!
そこで城戸の言葉を思い出した。
《 中学最後の大会で・・・セッター潰しにあって。それで・・・負けました・・・ 》
ハッと我に返り、城戸を見る。
そこには・・・蒼白した城戸が、うなだれて立っていた。
俺は澤村さんに軽く手を挙げて合図を送った。
すると澤村も何かを察したのか、黙って頷く。
澤「スマン!ちょっとタイム!」
澤村さんの声に、城戸の腕を掴みコートの真ん中へと連れて行った。