第19章 傷痕
~月島side~
ーーピッ!ーー
まず、1点。
ほらほら、何をそんなに驚いてんの?
練習でも、真剣勝負しようって言ってたのは、君デショ?
菅「月島どうした?さっきまでのサーブと違うけど、ギリ失敗か?」
「すみませ~ん、ちょっと打ち損ねるとこデシタ」
田「もうちょいなんだから、しっかり頼むぜ?」
「ハーイ、気をつけまーす」
今のが、失敗ギリギリに見えた?
まぁ、見ようによってはそう思われても仕方ない。
でも・・・違うケド。
僕は、狙って打ったんだよ。
ネットに引っ掛けそうになったのは、チョットだけ誤算だけどね。
・・・あの日。
あの会場に、僕は居たんだ。
うちの部の顧問のつまらない思い付きで、女子の大会の応援組として。
だって君が戦ってた相手チームってさ、僕の学校だったからね。
だから、知ってるよ。
あの時、君がどういう攻撃をされたのか。
どんな原因で、負けたのか。
・・・全部、知ってる。
悔しかったデショ?
だって、その後1人で泣いてたもんねぇ。
セッターとしての仕事を出来ずに、ただ点を取られ続けて負けて。
それで自分の責任だと思って泣くとか、馬鹿デショ。
ただ学校生活の部活動くらいで、どんだけ熱血なの?
校庭の端っこで王様達と練習してた時、あの3対3の時、何かにつけて突っかかってくれちゃってさ。
山口は学校の帰りに“ 小さくて何かちょっと可愛かったよなぁ ”とか、アホ丸出しで言ってたけど。
僕にはそんなの関係ない。
だから、その小生意気なところに釘を刺してあげる。
あの時と同じ状況で。
せいぜい思い出して、また悔し涙を流しなよ。
表情を変えずに、向こうのコートを見る。
フゥン、さっきより1歩くらい下がったのか。
なら、好都合。
口元だけを少し緩ませ、サーブを打つ。
今度も弱めに、ネットを超えるくらいで落ちる程度のサーブ。
ハッとしてから動くんじゃ、遅いよ?
ほら、もう2点目。
これで点数は、23対19。
あと、2点で終わる。
王様はトスを上げられない。
君の戦力の代わりって言っても、トスが上がらなきゃ攻撃も出来ないデショ。
何の意味も持たない戦力。
そんなの、ないのと一緒じゃん。
フッと軽く鼻を鳴らし、サーブをもう1度サーブを打つためにボールを掴んだ。