第18章 練習試合!
収拾のつかなくなりそうな状況に、私は澤村先輩を見た。
すると澤村先輩は大きなため息をつき、ネット際まで歩いて来る。
澤「騒ぐな!!」
そのひと言で一瞬にして静まり返る。
澤「時間は限りがある。その時間をムダにするか、有効とするかは俺達の気持ち次第だ。それに、確かにこっちには影山を入れたが、それは俺の判断でそうした。何か意見は?!」
菅「意見っていうか、そういうのじゃないけど。青城との練習試合を考えたら、オレがこっちに入るより影山を戻した方がよくない?」
菅原先輩が言っている事は確かに正論でもある。
でも、バランスの悪いような組み合わせで練習してみてこそ、正式メンバーで練習している時には見えない物が見えてくる可能性もある。
菅「それに、紡ちゃんも。もし、こっちのスパイクが当たっちゃったりしたら・・・」
『私ですか?!』
この話の流れで急に自分の名前が出た事に驚く。
菅「そう、紡ちゃんの事。相手に女の子がいる事で、多少なりとも危険性はあるよ」
『ん~・・・もしそうなった時は、そうなった時ですよ』
菅原先輩が心配してくれる事はありがたいと素直に思う。
でも、私がコートに入る事を引き受けた以上、それは自己責任。
澤「それは心配ないよ。俺達全員で、カバーするから」
菅「万が一って事は考えないの?」
澤「そうだなぁ。もしその万が一担ってしまったら・・・責任を取って城戸さんをお嫁に貰うことにするよ」
澤村先輩はそう言いながら、隣に並んでいる私の肩を抱き寄せた。
『こ~んなお転婆なお嫁さんで、いいんですか?』
見上げて、笑う。
澤「いいよ。お転婆なのは。もう知ってるから」
『じゃ、もしもの時は・・・ふつつか者ですが』
澤「了解」
お互い冗談を交わし合い、うっすら微笑む。
菅「お願い・・・2人の世界に入らないで・・・」
澤「ま、そういう事だから、始めるぞ」
何かよく分からないけど、菅原先輩はネットにしがみつき打ちひしがれている。
このまま始めてしまうのも、少し悪いかな?と考え、ネットにうなだれている菅原の手を、ネット越しに掴んだ。
『菅原先輩?』
声をかけると、菅原先輩が顔を上げる。
『私、菅原先輩が指示出してトス上げるところ・・・見てみたいなぁ』
菅「えっ?!」
『カッコイイんだろうなぁ・・・ベテランの力』