第18章 練習試合!
私は肩にかけていた物を外し、邪魔にならないように体育館の端へ置き、澤村先輩も含めた4人の元へ急いだ。
『お待たせしました。ボール合わせ初になりますけど、よろしくお願いします!』
私が言うと、それぞれがちゃんと挨拶を返してくれる。
澤「城戸さん、多少の誤差は気にしなくていいからね?無理せずトス上げてくれたら、それでいいから」
縁「ですね。せっかく来てくれてるのに、嫌になっちゃったら悲しいし」
そう言う2人に私は笑って返す。
『お気遣いありがとうございます。でも、ちょっと不安はありますけど、大丈夫です。王様から秘技を伝授して貰ったから』
澤「影山に?」
さっきと変わらず無愛想にしている影山を澤村先輩が見る。
『フフッ、まぁ、頑張りますから安心して打ち込んでみて下さい』
縁「何か急に頼もしく感じるよ」
縁下先輩が私を見てそう言って笑う。
『損は、させたくないですから』
澤「よし、始めるか」
澤村先輩の言葉に、タイマー係をしてくれる清水先輩が頷く。
『順番とか気にせず、自由にボール出して下さい。出来るだけ合わせますから』
そう言って私はネット際に移動した。
先頭は、木下先輩か・・・
確かネットからボール3つ分より、少し下。
ポンッという慣れ親しんだ音と共に、ボールが放物線を描く。
バシッと音を立て、それは相手コートへと送られる。
次、成田先輩。
同じ様にトスを上げると、キチンとスパイクしてくれる。
縁下先輩と澤村先輩はボール3つ分って言ってた。
前の2人より、少し高めにトスを上げる。
うん、縁下先輩も難なく打ち込んでくれる。
ラスト、澤村先輩。
って、あれ?
私に向かってくるボールが、少し距離が長い?
訂正をかけるにも、澤村先輩は既に走り込んでいる。
それを足止めするのも勿体ない。
私はボールから目を離さない為に、澤村先輩に背中を向ける。
影山みたいに、上手く行くとイイけど・・・
そう思いながら、タイミングをはかり少し早めのトスを出す。
すぐさま振り返り、ボールの行方を目視する。
そのボールは軌道こそ少しズレたものの、澤村先輩がキチンと処理をしてくれて、遠慮なく相手コートへ落ちた。
さすが主将、という経験の長さ。
どんなに好きでも、積み重ねた経験という物は簡単には乗り越えられない。