第17章 陽だまり
澤村先輩に手を引かれながら体育館の中へと足を踏み入れる。
何もなければ入ることに関してなんて事無いけど、正式に招き入れられるとなると、ガラにもなく緊張して。
こういう時は右足から?いや、左足からの方が縁起がいいんだっけ?などと考えたら、足を踏み出す事を戸惑ってしまった。
澤村先輩にモタモタしてると思われたのか、さ、入って入ってと手を引かれ、今に至る。
みんなの集まる前に案内され、澤村先輩が事の経緯を簡単に説明してくれた。
澤「何か質問ある人?!」
澤村先輩が言うと、田中先輩がじゃあと1歩前に出る。
田「大地さんとお嬢、なんで手ェ繋いでんスか?」
そう言われ、みんなの目が繋がれたままの私達の手に注目した。
澤「えっ?!」
あっ?!
指摘されて初めて、私達はパッと手を離す。
なんとなく恥ずかしくて、お互いにぎこちない素振りになってしまった。
澤「あ、えっと、じゃあさ、ひと言いいかな?」
澤村先輩に言われて、頷く。
『1年の、城戸紡です。今日から数日ですけど、皆さんのお手伝いをする事になりました。私に出来る事なら何でも一生懸命やりたいと思ってます。何かあれば言ってください。よろしくお願いします!』
そう言って簡単な挨拶をしてお辞儀をした。
顔を上げると、見るからにソワソワした日向君と視線が合い、すると急に元気よく飛び跳ねる。
日「はいはーい!!あのさ、城戸さんに出来る事なら何でもって言ったじゃん?!」
『まぁ、そうだけど・・・何かある?』
何となく日向君が何を言おうとしているのか予測はつくけど。
日「じゃあさ!オレにトス、上げてくれる?!」
・・・やっぱり。
『トス・・・?』
そう返しながら、隣に並んでいる澤村先輩の顔を見ると、ニコニコとして頷いている。
澤「城戸さんの得意分野なんだから、遠慮なく“何でも”希望を聞いてやって?ね?」
そう言って頭をポンッと1つして、笑顔を見せた。
“何でも”のあたりが、なぜか強調された様な気がするのは、私の思い過ごしなんだろうか。
『・・・得意分野とか、澤村先輩ハードル高くしないで下さいよ。ここには菅原先輩も、ついでに影山だっているのに』
ついでにと言った事で影山は眉間にシワを刻んでいたけど、実際に公式戦に出るとなると女である以上、私はコートに入る事は出来ない。