第17章 陽だまり
傷口は深くはないものの、スパッと切れていて、押さえていたタオルを外すとジワリとまた血が滲んでくる。
『ちょっと染みるかも知れませんけど、男の子だから、我慢して下さいね?』
ニヤリと笑い、容赦なく消毒液を吹きかけると、澤村先輩は一瞬だけ顔を歪めた。
「結構、強気にいったね? 」
澤村先輩が苦笑いで呟く。
私はそれに笑顔を返し、流れてくる物をタオルで押さえ拭いた。
絆創膏を取り出して、傷口とのサイズを見て、2枚を繋ぎ合わせるために1度手を離す。
ハサミで違和感が出ないように切り合わせ、澤村先輩の指に巻く。
『違和感、大丈夫ですか?』
そう聞くと澤村先輩は何度か指を動かし、大丈夫みたいと笑う。
『じゃ、練習中に剥がれないようにテーピングで少し止めますね』
この後、何も手を使う事が無ければテーピングなんて必要ない。
でも、澤村先輩は体育館に戻れば練習でボールを使う。
そうすれば否が応でも絆創膏は緩んだり剥がれてきたりして、それが気になって集中出来なくなる事が多い。
そんな風にならない為の、念には念を・・・の、テーピング固定だから。
何種類かサイズがあるなかから、適当な物を選び、澤村先輩の指に巻き付ける。
『終わりました。一応今、可動させてみて下さい』
「うん、違和感もないし、指もちゃんと動かせる。ありがとう。しっかし、いつ切ったんだろうなぁ」
『傷口からして、多分・・・それかと?』
さっき澤村先輩が転んだ場所に、食べ終わったお菓子の缶が口を開けたまま転がっている。
『紙で切ったにしては出血多かったし』
「部屋はキレイに片付けないと危ないってことだね」
澤村先輩の言葉にコクリと頭を振る。
『澤村先輩、練習に戻りましょう』
そう声をかけると、澤村先輩はさっき買ったミルクティーを持ち上げて私に見せた。
「せっかくだから、少し飲んでいかない?体育館戻ったら、きっとスガや田中が騒いで飲むヒマないだろうからさ」
そう言って笑う澤村先輩に、私はそうですねと返し、ミルクティーに口を付けた。