第17章 陽だまり
澤村先輩の傷の手当をしながら、少しずついろいろな話をする。
青城との練習試合、参ったと言わせましょう!
そう伝えると、澤村先輩は凄く嬉しそうな顔を見せてくれる。
でも、本格的にマネージャーを受けるにもお願いがあると言うと、澤村先輩は話を聞くよ?その為のこの時間だからと言ってくれた。
「お願いって?」
そう正面から聞かれると、ちょっと言い出しにくい感じがして、私は何となく俯いてしまう。
『お願いというか、条件っていうか』
「いいよ、話してみて?」
穏やかな声に誘われるように、顔を上げる。
『マネージャーとして行動するのを、ひとまず青城との練習試合が終わるまで・・・っていう区切りでは、ダメですか?』
「青城との?」
『はい。私の中の決意の区切りとして、まずは青城との練習試合までで、気持ちの区切りをつけたいんです。残り数日ですけど、それまでは全力で仕事しますから。ボール出しでも掃除でも、何でも』
「気持ちの区切りって?」
マネージャーを受けてもいいと提示したものの、ワガママなヤツだと思われているかも知れない。
『私は本当はバレーが嫌いではないです。むしろ、それしか取得がない、みたいな?でも、そんな私がプレイヤーとしての自分を端に寄せて、マネージャーとしてやって行けるのか?っていう、自分の中での心の準備期間です』
そう言うと澤村先輩は暫く考え込み、やがて目線を合わせてくれた。
「分かった。その条件、飲むよ」
『本当ですか?!』
「うん、男に二言は無い!だから、練習試合が終わるまではよろしく!」
『こちらこそよろしくお願いします!・・・それから、無理なお願い聞いてもらってありがとうございました』
お互いに元気よく頭を下げるのを見て、同時に笑い出す。
「なんか、照れるな」
顔を上げ澤村先輩はそう言うけど、私は照れるというよりも・・・
凄く凄ーく、緊張した。
胸に手を当てて、ふぅっと息を吐く。
「大丈夫?」
『・・・はい。何だか凄く緊張してしまって・・・』
私がそう漏らすと、屈託のない笑顔を見せながら澤村先輩は心配する事なんか何もないよと言ってくれる。
『気持ちが落ち着いたところで、消毒しますね』
私は澤村先輩の手を押さえていたタオルを外し、傷口を覗いた。
『う~ん、深くはないみたいですね。指先だからかな?』