第17章 陽だまり
「随分と応急用品を揃えてるんだね?」
素朴な疑問を漏らす。
『実は前に一人で買い物に出た時に街角で出会い頭に人とぶつかってしまった事があって。私も足急いでいたから、結構な勢いでドーンって。そしたらヒザを擦りむいたのを手当てしてくれてんです』
「危ないなぁ、その頃からお転婆さんだったんだね?城戸さんが擦りむいたって事は、相手も怪我してたんじゃない?」
今までの俺との事を思い出しながら、笑ってしまった。
『むぅ・・・あの時のは軽い事故ですよ?出会い頭だったし。それに及川先輩は無傷でしたし。・・・あ』
無意識に名前が出たのだろう。
相手の名前を口にしてしまった事で、城戸さんは俺から視線を外す。
「及川先輩って・・・もしかして青城の及川?」
俺が聞き返すと、何となく気まずそうに視線を泳がせている。
「いいよ、気にしなくて。いつかはどこかで戦う相手なんだから」
『はい・・・なんか、すみません・・・』
「で、その及川がどうしたの?」
穏やかに聞くと、城戸さんは顔を上げ、また話し出した。
『その時、私は舐めときゃ治りますって言ったんですけど。・・・あれ?これじゃ澤村先輩と変わらないですよね?』
そう言って城戸さんは笑う。
『それで、私がそんな事を言ったから、ダメダメ手当しなきゃって。そしたら及川先輩の鞄からウエットティッシュや絆創膏が出てきて、男の人なのに女子力高いなぁって。私も見習わなきゃって。それで必要最低限は持ち歩くようにしたんです。』
へぇ・・・あの及川がそんな物を持ち合わせていたとは。
まぁ、普段から女子に囲まれているから、モテの秘密はそういう所からなのか?
それで今、俺がこうしてお世話になってるあたり、何とも言いがたいけど。
ん?
及川って、確か・・・セッターだったよな?
じゃあ、城戸さんにセッターの仕事云々を教え込んだのは、及川か?
「もし、答えたくなかったら無視してくれていいんだけど。城戸さんにセッターの仕事を教えたのって・・・もしかして青城の及川?」
何を聞いてるんだ、俺は。
昨日の話の流れからして、聞いちゃ行けない事じゃないのか?
今更ながら、後悔を始める。
「あ、えっと、ゴメンね?今のはナシで。聞かなかった事にして?」
取り繕うように言って、横を向いた。
『あぁ、バレちゃいました?』