第17章 陽だまり
「城戸さんには恥ずかしいところを見られちゃったよ。普段からキレイと褒められた感じではないけど、今日は特に・・・」
『そんな事は・・・それより澤村先輩、右手、出して下さい』
「右手?」
城戸さんにそう言われて右手を見ると、指先からタラりと血が出ている。
いつの間に切ったんだ?
しかもこんな血が垂れてくるほど。
そんな事を思っている内に、ポタリと雫が落ちそうになる。
『おっと、危ない危ない』
そう言って城戸さんが、自分のハンドタオルで俺の手を押さえた。
「舐めときゃ治るから大丈夫だよ。それに汚れてしまうし」
咄嗟に手を引っ込めようとする。
『ダメです。そんな事して、ばい菌でも入ったら治りも遅くなるし、タオルの事は気にしないで下さい』
そのままタオルで包まれ、両手で押さえられる。
小さな・・・手だなぁ・・・
まじまじと、俺の手を包む城戸さんの手を見つめる。
こんな手で、あんなアザだらけになるほどバレーボールを追いかけるなんて、やはりそれだけ好きな事なんだろう。
その手は俺の手なんかより、ずっとずっと小さくて、指なんかも細くて、色白で・・・柔らかそうだった。
手・・・繋いだりしたら、俺の手の中にすっぽりと収まってしまいそうなサイズだな。
ふと、そんな情景を思い浮かべてみる。
・・・いやっ!
イヤイヤイヤイヤイヤイヤッ!!!
な、なんて事を考えてるんだ俺はっ!
自分のおかしな想像のせいで、急に城戸さんを意識してしまう。
心臓が猛ダッシュを始め、顔が熱くなってくるのを自覚する。
マズイな・・・
いまこんな顔を見られたら、おかしな誤解をされてしまう。
無意識に左手で顔を押さえる。
『押さえてるところ、痛みますか?』
「えっ?あ、い、いや、そんなことないよっ」
顔を隠したまま、しどろもどろに返す。
『そうですか?なんか顔を押さえてるから、もしかして痛みが出てきたのかと・・・』
一瞬俺の方を見て、城戸さんはまた押さえている場所に視線を戻しタオルを開く。
『とりあえずは、血が止まったみたいですね。消毒したら、また出ちゃうかもですけど』
言いながら俺の手を離さず、そのまま片手でリュックからポーチを取り出し中身を広げ出した。
小さなハサミに、消毒液に、絆創膏に、テーピングに・・・冷却ジェル?