第17章 陽だまり
すぐに戻るから待っててと言い残して、澤村先輩が体育館の中に戻って行った。
練習終わるまで待ってるからって言ったのが不味かったかな・・・
その事で貴重な練習時間を止めてしまっては申し訳ない。
澤村先輩が戻って来たら、夕方に出直しますって伝えて1度帰ろうか?
そんな事を考えていると、体育館扉が開いて足音が聞こえた。
あ・・・れ?
清水先輩?
澤村先輩は練習があるから、清水先輩を呼びに行ったって事?
頭の中にハテナマークが次々と浮かぶのを自覚しながら、私はそっと立ち上がり、制服をパタパタと叩いた。
澤「お待たせ」
『いえ・・・大丈夫です。えっと・・・おはようございます、清水先輩』
清「おはよう、城戸さん」
日差しがキラキラと注ぐ清水先輩は、1段と美人度を増していて、私が女であってもクラクラしそうな微笑みで返してくれる。
あれ、そう言えば・・・
『澤村先輩も、おはようございます』
澤「えっ?俺?」
『はい。さっきは驚きの方が先に来ちゃって、挨拶忘れてしまってごめんなさい!』
軽く頭を下げると、ビックリさせちゃったのは俺の方だしと言って笑ってくれた。
清「澤村、用事って?」
澤「あぁ、それなんだけどさ。ちょっと城戸さんと話し合いたい事があって、ここじゃなんだからさ、部室にいるから」
『えっ?!さ、澤村先輩?!練習があるのに悪いです!!』
私の事に、貴重な練習時間を潰して欲しくはない。
なのに・・・
清「・・・わかった。何かあったら連絡する」
清水先輩は呆気なく了承してしまった。
『でも!澤村先輩の練習時間が・・・』
ホントに申し訳なくて、俯きながら呟く。
澤「大丈夫だって。これでも主将だから、今まで積み重ねて来た物でカバー出来るから。ね?」
澤村先輩はにこやかに言うけど、青城との練習試合を考えたら、優先すべきなのに・・・
澤「じゃ、清水。そういう事だから」
清「わかった。部室に2人でいて、くれぐれも城戸さんに変な気を起こしたりしないで」
澤「なっ、そんな事しないから!」
清「どうだか?」
淡々と言う清水先輩に、焦りながら答える澤村先輩のやり取りに笑ってしまう。
『清水先輩、澤村先輩なら大丈夫ですよ。もし、仮に何かあったら・・・その時はドア全開にして叫びますから』