第17章 陽だまり
いや、だからなのか?
城戸さんの柔らかな笑顔を見ただけで、心を何かに打ち抜かれた気持ちになる。
どうしたんだ、俺は。
俺も女子に免疫がある訳じゃないからか?
普段は清水や道宮、あとはクラスの女子くらいしか話したことないしなぁ。
改めて自分の女っ気の無さに乾いた笑いを漏らし頬を掻いた。
『澤村先輩?どうかしましたか?』
不意に覗かれ、反射的に体を引いた。
「いや、だ、大丈夫だよ、そ・・・それよりさ、ここへ来てくれた理由、聞いてもいい?」
さっきので早まった鼓動を気づかれないように、話を続ける事にした。
『その事なんですけど、少し相談したくて・・・でも、今は練習始まっちゃってるし、終わるまで待ってます。邪魔にならないように、ここで』
「練習終わるまでって、お昼まで?」
俺がそう返すと、城戸さんはニコニコして頷く。
せめて体育館の中で・・・いや。
そこまで考えて、俺はひとつ案を思いついた。
「城戸さん、ちょっとだけ待ってて?すぐに戻るから」
そう言って俺は、城戸さんからの返事を待たずに体育館の中に戻った。
「スガ、清水、ちょっといい?」
2人に手招きをしながら俺は体育館ステージに置いたジャージの上着を羽織る。
程なくすると2人は俺のところまでやって来た。
菅「大地?上着なんか羽織ってどうしたの?」
「あぁ、これは別に。あのさ、ちょっと用事が出来て体育館離れるから、戻って来るまで頼んでいいか?」
ポケットの小銭を確認しながら言うと2人とも引き受けてくれた。
「じゃ、悪いけどよろしく頼むよ。何かあったら電話は出るから」
そう言い残して、俺は踵を返して歩き出した。
あ、そうだ、清水にだけは伝えておこう。
「清水ゴメン、ちょっと来て」
さすがに誰か1人くらいは居場所を教えといた方がいいだろうし。
今回はスガに言うより、清水に伝えた方がいいだろう。
清「澤村?」
清水に呼び掛けられ、悪い悪いと笑って扉を開け、清水の背中を押しながら外へ出た。
清「澤村、あの子ってこの前の」
清水が城戸さんの姿を見つけ、俺を見上げる。
「そう、用事っていうのはさ、城戸さんの事なんだ」
俺はそう答えて、清水の肩に手を置く。
清「あの子に告白でもするの?」
「違うから!」
そう言いながら、城戸さんの元へ歩き出した。