第17章 陽だまり
自分の体スレスレ位の隙間で扉をすり抜ける。
開けた時と同じ様に静かに扉を閉めて、ゆっくり振り返った。
・・・いた!!
影山が言っていたように、体育館の通路の端で、柱に寄り掛かるように城戸さんが座っている。
ホントに、本人だよな?
ギュッと目と閉じて、もう1度開く。
幻ではない・・・いや、何やってんだ俺は。
ひと呼吸して、城戸さんの元へ近づく。
「・・・城戸さん?」
驚かせないように、静かに声をかけてみる。
それでも、誰もいなかった所へ急に名前を呼ばれて驚いたのか、城戸さんはピクリと肩を跳ねさせて、それからゆっくりと俺の方を向いた。
『うわっ?!・・・あ、澤村先輩?!』
うわっ・・・て、そんなに驚かなくても。
俺は苦笑いを浮かべながら、城戸さんの隣に腰を下ろしてみた。
「来て・・・くれたんだね。でも、どうしてこんな所に?」
率直に聞くと、城戸さんはちょっと俯きながら両膝を抱えた。
『迷いに迷って、ここまでは来たんですけど・・・練習始まっちゃってるし、閉められている扉を開けてまでは、入りづらいというか、なんというか・・・』
小さな体を、さらに小さく抱えて城戸さんがポツリとこぼした。
「ははっ、思いっきり開けてくれても構わないのに」
『そういう訳には!まだ、その、部外者・・・ですし・・・』
律儀な子だなぁ、なんて思いながら、いま城戸さんが言った言葉をふと考える。
あれ?
いま・・・まだ、部外者って言わなかった?
まだ、って。
・・・まだ?
「き、城戸さん!もしかしてあの話受けてくれるの?!」
勢いのまま思わず城戸さんの両肩を掴み、声に出してしまった。
『ち、違うんです!あ、いえ、違わないんです!いや、そうじゃなくて、えっと、・・・あ、あれ・・・?』
俺が急にそんなことを口に出したせいか、アタフタしながら城戸さんは答えた。
「とりあえず、1回落ち着こうか」
そう言って城戸さんの頭をポンポンっと撫でてみた。
すると少し恥ずかしそうな顔を見せ、何度か深呼吸をしている。
『ふぅ・・・すみません、落ち着きました』
そう言って城戸さんが微笑んだ。
なんだよ、これ・・・
これはスガじゃなくても・・・なんかヤバイ。
普段から田中達がクールビューティなどと騒いでいる清水といるからなのか分からないけど。