第17章 陽だまり
澤「俺とじゃ何か不満でも?」
後ろから声をかけられ背筋がピンとする。
「いいえ!宜しくお願いします!」
駆け足で澤村さんの所まで行き、柔軟を始める。
ある程度の所で澤村さんと交代し、今度は俺が体を押される側になった。
何度か背中に押されながら体を解していると、換気窓の向こうで何かが動いた気がした。
?
いま、人影が?
いや、今日は日曜日だから他の部活のヤツらが移動しているだけかも。
そう思い、特に気にしないようにしていたが・・・
その人影は、どういう訳か右に行ったり左へ行ったりと落ち着かない。
正面の換気窓の向こうがどうしても視界に入り、今もチョロチョロと動く人影を追ってしまう。
そしてその人影は、居場所を落ち着かせたのか立ち止まり、そのまま腰を下ろした。
・・・が!
あれって?!
背負っているリュックに付けられた、手のひらサイズのパンダのキーホルダー。
それは小さなぬいぐるみの形をしていて、俺は見覚えがある。
あれは確か、城戸のリュックにも付いていた。
・・・って事は?!
城戸なのか?!?!
いや、まさか?
体を2つに折り曲げ、床に平たくなったままジッと見てみる。
こっちに背中を向けて座る姿だけじゃ、確信は持てない。
澤「よし、ここまで。各自軽く給水して、その後すぐにサーブ練習するぞ!」
声をかけるなら、今の時間がチャンスだ。
俺は立ち上がり、ドアに向かおうして躊躇する。
もし、城戸だったとしたら・・・
俺が声をかけて、いなくなってしまうかも知れない。
昨日の事がよぎり、俺は歩く方向を変えた。
「澤村さん、ちょっといいですか?」
菅原さんの隣で給水をする澤村さんに声をかけた。
澤「ん?」
「あの、ちょっと・・・」
他に聞こえないようにするため、澤村をみんなから離れた場所へ呼ぶ。
澤「どうかしたのか?」
「あの、まだ確信は持てないんですけど。体育館の外に、もしかしたら・・・城戸がいるかも知れないんです」
澤「・・・ホントか?!」
「城戸・・・かどうかは、本人の姿を見た訳じゃないんで何とも。でも、その人影のリュックに付いているパンダのキーホルダーに見覚えがあって」
そう伝えると、澤村さんはドアの方をジッと見ていた・・・