第17章 陽だまり
慧「はいよ、着いたぞ」
慧太にぃが校門の手前で車を停めてくれる。
『ありがとう、送ってくれて』
素直にお礼を言って私は車を降りると、続けて慧太にぃも車から降りた。
慧「紡、自分らしくって事を忘れんな・・・Let'sポジティブ!な?」
慧太にぃの言葉に、私は言葉の代わりに笑顔で返した。
慧「よし、じゃあ行って来い」
そう言って慧太にぃは私の背中に手を添える。
『行ってきます』
振り返り、慧太にぃに笑顔を向けながら歩き出した。
門の前で振り返ると、まだ見送ってくれている慧太にぃと視線が合い、小さく手を振ってくれた。
私はニコニコとして、慧太にぃ大きく手を振りながら、そのまま門の中へと入って行った。
菅原先輩と何度も歩いた体育館までの道のりを、今日は1人で歩く。
この間までは、あっという間に着いてしまった体育館が今日はとても長く感じるのは、なぜだろうか。
何気なく校舎に付けられた時計を見る。
その針たちは9時20分を指していた。
昨日、澤村先輩が影山に9時練習開始だって言ってたよね。
遅れてしまったのは自己責任ではあるけど、練習が始まっている体育館の中にはイキナリ入りづらい。
とりあえず体育館に着いたら、入口からこっそり様子を伺って、練習の切れ間に声をかけてみよう。
そう考えながら歩き、体育館前に着いた。
けど。
・・・・・・・・・。
体育館扉が、閉まってる・・・
いきなり出鼻をくじかれる状況に、早くも心が折れそうになり、その場で足を止めた。
よく考えたら、目前に控えた青葉城西との練習試合の為に一生懸命練習している所に、途中からコンニチワ・・・なんて顔出しできないよね。
だったら、いっそのこと一度帰ってから出直そうかという考えも浮かんで、クルリと体の向きを変え歩き出そうと足を前に出す。
〝 Let's ポジティブ! 〟
さっきの慧太にぃの言葉が、後ろ向きになりそうな私の気持ちを阻んだ。
『Let's ポジティブ・・・』
小さく呟いて、体の向きを体育館へと向ける。
扉が閉まってるなら、開くまで待ってればいい。
練習はまだ始まったばかりなんだから、今はきっとアップの時間だろう。
アップが終われば、軽く給水して練習に入る。
その時まで、外で待っていてタイミングを計って訪ねていけばいい。