第17章 陽だまり
もうひと言なにか言ってやろうと視線を向けると、慧太にぃはニコニコしながらヒザをポンポンした。
・・・諦めるか
何がしたいのかよく分からないけど、とりあえず言われたようにヒザにそっと座ってみる。
『あれ?』
なんだろう、なんか凄い違和感・・・
こんなの今までやった事ない・・・よね?
過去の記憶を辿ってみるも、思い当たる事は浮かんでは来なかった。
『なんか変』
立ち上がり、ソファーに座っている慧太にぃの隣に腰掛けた。
慧「一瞬で終わりかよ」
笑いながら拗ねる慧太にぃに私も笑う。
『そういうのは彼女に言いなよね~。あれ、彼女いなかったんだっけ?』
慧「・・・うるさい」
昨日の桜太にぃと同じ答え方をする慧太にぃの事が面白くて、私は笑い続けた。
『さぁてと、朝ごはん何食べようかなぁ』
そう呟きながらキッチンへ入る。
・・・え?
私の・・・お弁当?
それに朝ごはんまで。
なんで?
咄嗟に慧太にぃを振り返る。
慧「オレじゃねぇよ、桜太が支度してた」
私が聞こうとしたことを察して、先に慧太にぃが言う。
『でもお弁当なんて、今日は日曜日なのに』
そこまで言って、ハッとする。
桜太にぃ、私が体育館行ってみようか迷ってた事、気がついてた?
私は何も言ってないのに?
お弁当の包みをそっと持ち上げてみると、下からメモが出てきた。
〘 紡へ お昼はしっかり食べる事 紡はちゃんと歩き出せるよ 自分らしく頑張ってね 〙
桜太にぃの綺麗な字が、少しずつ滲んでくる。
なんてことない、たったそれだけの言葉が嬉しかった。
慧「紡は泣き虫だなぁ」
いつの間にか側に来ていた慧太にぃが、いつもの様に頭をポンッとしながら顔をのぞき込む。
『な、泣いてなんかないし!ちょっと鼻水出ただけだし!』
袖口でゴシゴシと目を擦りながらお弁当の包みにメモを押し込んだ。
慧「目から鼻水出すとか、随分と特異体質だな」
ニヤリと笑う慧太にぃを交わしながら、小さく深呼吸をした。
『・・・うるさいよ』
慧「ま、アレだ。紡が何を思い詰めてんだか知らねぇケド、当たって砕けて来い」
『もし、砕けちゃったら?』
未だ少しの不安を抱えたまま、尋ねてみる。
慧「砕け散ったら、オレと桜太がかき集めてやるよ。とりあえずお前はサッサと朝飯食え」