第17章 陽だまり
カーテンの隙間から入る光で目が覚めた。
凄くよく眠れた気がする。
もそもそとベッドから抜け出し、思い切って窓を全開にする。
春先とはいえ、まだヒンヤリとした空気が流れ込んでくる。
真新しい空気を胸いっぱいに吸い込み、大きく吐き出した。
良く寝たはずだわ・・・
アラームもかけずに寝てしまったから、時計は既に7時半を回っている。
とりあえず朝の支度は済まそうと階下へ降り、洗顔やらを終えるとリビングに向かった。
『おはよう・・・って、誰もいないのか・・・』
リビングの明かりはついているのに、そこに人影はない。
何気なく各個人の予定を書き込むホワイトボードを見ると、桜太にぃは既に出勤してしまったようだ。
慧太にぃは10時に出るって書いてあるけど、早く出たのかな?
そんな事を考えていると、ウッドデッキからその本人が入って来た。
『慧太にぃ、いたの?』
慧「いたの?って、まるでいちゃダメみたいな言い方なのはオレの気のせいか?」
ニヤリと笑って慧太にぃは返す。
『違うから!もう出掛けたと思った所に外から来たから言っただけだから。ホント、可愛くない兄なんだから、ベーッだ!』
軽く悪態をついて、慧太にぃに仕返しをする。
慧「オレは男だから可愛くていいんだよ~」
そう言いながら私の頭を盛大にぐしゃぐしゃとかき混ぜて、カウンターに置いていたシュシュでヘンテコに髪を結ばれた。
『ちょっとヤメテよね!っとに、そういうのいらないから!』
おかしな位置に結ばれた髪を解き、手ぐしで髪を整えていると、“ 紡 ”とひと言だけ名前を呼ばれる。
『今度はなに?』
わざとらしくため息をつきながら振り返ると、なぜか慧太にぃはソファーに座った自分のヒザをポンポンと叩いてみせる。
何なの?
まさかそこに座れって事?
『・・・よく分かんないけど、お断りします』
慧「なんでだよ」
『あのね、私はもう高校生なんだけど?それなのに、そんなよく分からない事されても困るから』
慧「・・・いいからいいから、オレにもたまには桜太みたいないい思いをさせてくれって」
『は、ぁ?ばっかじゃないの?!桜太にぃでさぇ、そんな事しないって!』
慧「いーから早く!」
・・・はぁ・・・
これは座るまで何度も言われるなと思って、先に私が折れた方が早いかも知れないと諦めを覗かせる。