第16章 初めの1歩
澤「じゃ、俺達も行こうか」
澤村先輩の声で、残る2人も頷く。
菅「それじゃ紡ちゃん、またね」
菅原先輩がそう言って軽く手を振る。
『はい、また明日・・・』
そんな風に挨拶を交わし、私達はそれぞれの方向へと歩き出した。
歩き出したって言っても、実際に歩いているのは桜太にぃだけど。
肩越しに桜太にぃを覗き見ると、何となく嬉しそうな笑みを浮かべているのに気づいた。
『何かいい事でもあった?』
桜「ん~?どうして?」
『だって何か、桜太にぃ嬉しそうにしてる』
そう言って返すと桜太にぃは笑った。
桜「しいて言うなら、紡が小さい頃はよくこうやっておんぶしたなぁってね」
『もぅ、今日の桜太にぃは小さい時の事ばっかり。おじいちゃんになっちゃったみたい』
桜「えぇ~、おじいちゃんって・・・俺はまだまだ健全なお年頃ですよ?」
『・・・彼女は出来ないのに?』
桜「・・・うるさい」
軽口を交わし合いながら路地を進むと、あっという間に家に着いた。
それから後は、おんぶ状態で帰ってきた私を見て慧太にぃがギャアギャアと騒ぎ、いつもの様に3人で夕飯を終えた。
私はと言うと、普段の何倍もの密度がある1日を過ごした事もあり、お腹も満たされたのも重なって睡魔と戦う時間を過ごしていた。
ふと、時計を見れば小学生でも起きているような、寝るには早い時間帯だった。
・・・にもかかわらず。
今日に至っては、どうにも睡魔に勝てない気がして寝てしまおうと部屋に戻る事にした。
何か疲れたから寝るね、とソファーでゴロゴロしてる慧太にぃに告げ、シャワーから戻らない桜太にぃにも伝えといてと頼みながらリビングを後にした。
部屋に戻ると、ポツンと置かれたミニテーブルが目に入る。
マネージャー・・・か・・・
まだモヤモヤした気持ちを抱えながら、スルスルとベッドに潜り込む。
瞼を閉じると、眠りにつくまで時間はかからなかった。