第16章 初めの1歩
まだ出会ったばかりの人達が、そう思ってくれた。
私は・・・変われるかも知れない。
桜「紡?」
名前を呼ばれ、振り返る。
そこには軽く息を切らせた桜太にぃがいた。
桜「はぁ・・・。やっと追いついた。全く紡は昔っからかけっこは早かったから」
『桜太にぃ、どうしたの?』
なぜそこにいるの?という事を含めて問いかける。
すると桜太にぃは笑いながら私の頭をポンッして、おてんばさんを追いかけてきたんだよと答えた。
桜「用事は済んだ?」
何も聞かず、ただそれだけしか言わない桜太にぃは、静かに微笑んでいた。
『・・・まぁ、なんとか』
桜「そっか。みんなも足止めして悪かったね、ありがとう」
桜太にぃがそう言うと、澤村先輩達は“ 足止めだなんて ”と返す。
澤「桜太さんが来てくれてる事だし、帰り道は大丈夫だね?」
『はい、話を聞いてくれてありがとうございました』
菅「あ、でも紡ちゃんサンダルが・・・」
『あ・・・』
そうだった。
さっきストラップが切れて、履いて帰るにも片方引きずりながら歩くことになる。
何度か足をプラプラさせて、地に足を降ろす。
『何とかなりますよ、最悪は裸足で歩いて帰ります』
カラカラと笑いながら言ってみる。
菅「また紡ちゃんは・・・せっかく可愛いのに、そのワイルド志向やめようよ?」
菅原先輩も笑ってそう言った。
桜「ホ~ント紡は、そういう所は慧太寄りなんだから・・・ほら?」
桜太にぃが笑いながら私に背中を向け、屈んでみせる。
『えっ??いや、おんぶとかいいし!歩けるから!』
大きく両手を振りながら、ズリズリと後ずさりをする。
すると桜太にぃはスッと立ち上がり、クルリと私の方を向いた。
桜「じゃあ紡、二択ね?・・・おんぶと、お姫様抱っこ、どっちがいい?」
究極過ぎるよ!!
そう思っても、桜太にぃに反論出来ない自分が悲しい・・・
戸惑いのあまり口をパクパクしていると、菅原先輩と影山にそれぞれ両肩をポンッと叩かれる。
菅「あきらめな?」
影「あきらめろ」
2人からそう言われ、私は何か助け舟を出して貰おうと澤村先輩を振り返ったものの、澤村先輩もニコニコとしながら頷く。
『お・・・おんぶでお願いします・・・』
味方がいないことをあきらめ、言われる通りにおんぶされる。