第5章 霹靂
決して衝動的にそうした訳じゃない。
その後は、いくつか言葉を交わしそのまま別れた。
無意識に早歩きになる。
何なんだ、この心が抜け落ちた感じは。
俺は立ち止まり空を見上げた。
さっきまで青く高かった空が、重い雲を広げ、今にも降り出しそうな空気に変わっていた。
「紡・・・」
もう、何度呼んでも返事など来ない名前を呟いでみる・・・
「紡・・・」
もう1度だけ呼んで、拳を握る。
クソッ・・・
握った拳を電柱に叩きつける。
やり切れない思いを吐き出せずにいる俺に、空はいつしか雨を降らせていた。