第16章 初めの1歩
菅「あ、影山・・・って、どうしたんだよ、それは?!」
その言葉に一斉にドアの方を見た。
紡の・・・パンダ?
大きな体をした高校生男子が、子供ほどのサイズのぬいぐるみを抱えている姿は、流石に俺でも笑いをこぼしてしまった。
慧「影山、紡とケンカでもしたのか?」
慧太がいいながら、影山君からパンダを受け取る。
澤「それってどういう?」
「慧太はいつも紡をからかって怒らせては、あのパンダごと部屋から追い出されてるんだよ」
澤「・・・なるほど」
菅「えっ?じゃあ影山もしかして?」
影「そういう感じではないんですけど・・・あ、でもちょっと怒ってたかも」
何だか複雑な顔をしながら、慧太に背中を押されながら俺達の所まで来た。
「それで、紡は?」
影「コイツごと俺を追い出して、閉め出されたんで分かりません。でも、城戸は大丈夫だと思います」
「そっか、ありがとう影山君」
なるほど、紡は拗ねてるだけかな?
そんな事を考えながら、影山君に飲み物を出そうと立ち上がると、影山君が時間も遅くなったので・・・と言われ止められた。
「じゃあ、3人とも俺が送っていくよ」
澤「えっ。あ、それは大丈夫です。俺達3人とも頑丈だから」
菅「そうですよ!女子ならともかく、オレ達は男3人だし」
「そう?遠慮しなくていいのに。じゃあ、3人とも家に着いたら連絡して?一応まだ、高校生だしね?」
そう言うと3人とも頷いて返事をくれた。
それを合図としてか、澤村君も菅原君も続けて立ち上がり帰り支度をする。
影「えっと。慧太さん・・・俺達が帰ってからでいいんで、城戸の様子を覗いて見て欲しいんです。多分、いま城戸に必要なのは、慧太さんからの叱咤激励だと思うんで・・・」
慧「わかった。頼まれてやる」
慧太が快く受けると、影山君は安心しながら、今度は俺の方を見た。
影「その後で、必要なら・・・桜太さんが城戸をベタベタに甘えさせてやって下さい。これはきっと、俺達では出来ない事だから」
真剣な眼差しで頼んでくる影山君を見て、何となく彼の言おうとしている事が汲み取れた。
「いいよ、了解した」
俺もそれを引き受けると、影山君はホッとした様子で鞄を肩にかけた。
そんな3人を俺は玄関先まで送り出す事にした。