第16章 初めの1歩
ほんの数秒だけの暖かさを名残惜しいと感じながら体を離す。
改めて城戸と視線が合うと、つい、照れくさくなる。
「ま、澤村さんも返事は急がなくていいって言ってんだし、脳みそ沸騰するくらい考えとけ」
『影山・・・ありが、』
「っつうか、お前。ほんっとに小さいよな」
照れ臭さ隠しに悪態をつくと、近くに置いてあったぬいぐるみを投げられた。
「おまっ、何しやがる?!」
『うるさいうるさいうるさい!せっかく影山ってイイヤツって思ったのに、今ので台無し!もういい!バカ!もう出てって!』
城戸は言いながら、城戸と同じくらいのサイズのパンダのぬいぐるみで俺を部屋から押し出した。
俺とパンダを部屋から出たのを確認して、あっさりドアは閉められた。
まぁ、部屋から追い出されたら、下の階に降りるしかない。
この場に巨大なパンダを置き去りにするのも何だかな、と思い抱え直す。
「城戸、下に降りてるから」
ドア越しに声をかけながら、パンダの頭にぽふっと手を乗せた。
・・・行くぞ相棒。
ドアに背を向けた時、小さく“ ありがとう ”
って言う城戸の声が聞こえた。
不意打ちの攻撃に、俺は緩む口元をパンダで押さえながら階段を降りて行った。