第16章 初めの1歩
俺は自分を落ち着かせる為に大きく息を吸いこんで、そして吐き出した。
「及川さんの事は、もういい」
『はぁ?!影山が聞いてきたのに』
「うっせー」
もぅ、なんなの?などと小言を言って城戸は無言になった。
残る質問は、アレだ。
「城戸、マネージャーはどうすんだ?」
俺が聞くと、城戸は数回の瞬きのあと、俺を真っ直ぐに見た。
『どうしたら、いいと思う?』
「俺に聞くな。聞いてんのはコッチだし」
『そうだよね。何れにしても早く返事をしないと、火曜日には青城に、行くんだよね?』
「青城に行くから、迷ってんのか?」
俺の言葉に城戸が口を閉ざす。
当たり・・・かよ。
『そういう訳じゃ、ないけど・・・』
「じゃあ聞き方を変える。岩泉さんがいる青城に行くのが、怖いのか?」
その言葉を聞いて、城戸はハッとした表情を見せ、顔を少し逸らした。
これも・・・当たり、かよ。
城戸の表情がなぜか、俺の心にトゲを刺す。
クソッ・・・。
「お前さ、何をそんなに怖がってんだよ」
俺の言葉に、城戸が過剰に反応した。
「なんだよ・・・」
『桜太にぃからも、同じ事を言われたから。ちょっとビックリして』
城戸は俯いて、そうポツリと零す。
『影山が言った通り、青城に行くのも、青城ど岩泉先輩に会うのも怖い。でも、1番怖いのは、自分達で走り続けるから、もう付いてこなくていい・・・って、言われたらどうしようって。それが1番怖い・・・』
「バカだろ、お前。もし、城戸がマネージャーやったとして、お役御免だなんか言われるわけねぇだろ。マネージャー受けた時点で全員同じ仲間だ。一緒に歩いて一緒に走って行く。もし出遅れる事があったら、そん時は、」
『その時・・・は?』
ゆっくりと城戸が顔を上げ、視線がぶつかる。
「そん時は、俺が隣で歩いてやる」
『影山が?』
問い返す城戸に向けて、コクリと頷て見せた。
「だから、何も怖くないだろ。城戸は俺の事を孤独の王様じゃないって言った。でもそれは、城戸も同じだろ。いまこの時点で、城戸は独りじゃない。だから、お前は・・・」
黙って俺に守られてろ・・・
最後のひと言は、胸の奥にしまい込んだ。
代わりに城戸の手を引き、そのまま抱きしめてみる。
突然の事に城戸は体をビクつかせたけど、大人しくその状態でいた。