第16章 初めの1歩
初めは及川さんと歩く女が誰か興味無かったし、別にあの人が誰とどこを歩こうが関係ないと思ってた。
けど。
いかにも女子が好きそうな雑貨屋に入る所を見て、俺は目を疑うことになる。
城戸?!
その日の城戸は、普段学校で見かける装いとは全然違う格好だったけど、俺が城戸を見間違う訳がない。
その辺は自信がある。
何やってんだ城戸!
岩泉さんはどうしたんだよ?!
そんな事を考えながら、店の出入口が見える場所で、様子を見ていた。
別にストーカーをしている訳じゃない。
単に城戸が気になったから。
少し経つと2人して店から出て来たと思ったら、向かい合って何か言葉を交わしたと思ったら・・・
及川さんが城戸を抱きしめ、城戸も抵抗してはいなかった。
いや、抵抗出来なかったのかも知れないが、そんな事はその時の俺は分からない。
そんな2人を目の当たりにして、俺は苛立つ気持ちを抱えながら元来た路地へと足を向けた。
だから、その後2人がどこにいって何をしたかなんて、知らない。
「手・・・繋いで、歩いてただろ」
俺が言うと、城戸は少し考えてから“ あっ ”と小さく声を上げた。
『見て・・・たんだ・・・?』
困惑顔で城戸が言って、それに答えるように俺は頷いた。
『あれはね、事故?みたいなもんだから』
「は?事故ってなんだよ」
『あの日はたまたま参考書を買いに出て、偶然、及川先輩に会って、少しだけ買い物に付き合っただけで、寒かったから手を引かれて・・・』
「寒いだけで誰とでもあんな風に手を繋いだり、抱き合ったりすんのかよ」
『抱き・・・あれは、雑貨屋さんで自分で買おうと思ったものを、クリスマスだからって言われて買ってくれて、正面からお礼を言ったら、あぁなったっていうか、なんと言うか・・・とにかく及川先輩とはホントに何もないから』
城戸の口調が何故かだんだんと怒り口調に変わっていった。
なんで怒ってんだよ。
相手は及川さんだぞ、何があってもおかしくねぇだろ。
ほんっっっとに、鈍感で、無防備過ぎんだよ。
『だって及川先輩だよ?絶対有り得ないから。もし地球上に及川先輩と影山しかいなくなったら、私は迷わず影山を選ぶくらいだよ』
「なっ?!・・・お、俺を引き合いに出すな!」
予期せぬ発言にこっちが驚かされる。
何か言おうにも言葉が上手く出ない。
