第16章 初めの1歩
~影山side~
パタン、と、静かな音をさせながら澤村さんが部屋から出て行った。
『影山、話って?』
それまで背中を向けていた城戸がクルリと振り返る。
「あぁ」
俺は軽く返事をして、城戸に向き合った。
何から話そうか・・・
正直、城戸には書きたいことがいくつもあった。
岩泉さんのこと・・・
及川さんのこと・・・
バレーのこと・・・
それから、マネージャーのこと・・・
バレーのことに関しては、いま話の流れの中で聞いた。
きっかけになったのは、岩泉さんとのことだ。
そして・・・あの写真。
話をするだけで、あれだけ泣くのに。
なんで今も大事に飾ってあるんだ?
・・・こいつ、もしかしてまだ・・・
『影山?』
何も話さずにいる俺を疑問に思ったのか、城戸が首を傾ける。
1度に全部を聞けるわけじゃないから、ひとつずつ時間の許す限り聞くことにした。
「城戸、前から聞きたかったんだけど・・・」
重い口を動かし、話出した。
『なに?』
「お前、岩泉さんのことだけど、どう思ってるんだ?」
『え・・・?急に、なに・・・?』
俺が言うと、城戸は明らかに動揺していた。
「だから、岩泉さんのこと、まだ好きなんだろって言ってんだ!」
『違う、そんな事・・・ない』
深い溜息を吐き出し、スッと写真に指さした。
「じゃあ、アレは?」
指を指し示した所へ、城戸がゆっくりと視線を移す。
『あれくらい、いいじゃん。・・・大好きだった人が、憧れの人に戻っただけだから。飾っとくくらい・・・』
ヤメロ・・・
そんな寂しそうな顔して言うな・・・
「じゃあ、もうひとつ。及川さんと、その、付き合ってる・・・とか?」
『は・・・ぁ?!なんで?!』
俺の言葉に城戸が勢いよく返答する。
『及川先輩と付き合ってるとか、どうしてそんな?!ないない!絶対ない!』
さっきの寂しそうな顔はあっという間に消え去り、代わりに驚きのあまり黒目がちの大きな目を見開いていた。
「・・・見たから、だよ」
『見たって何を?いつ?』
「去年のクリスマスに」
その日、俺は世間はクリスマスムード1色だって言うのに別に特定の誰かと約束がある訳でもなく、ただブラブラと街中を歩いていた。
その時に、見たんだ。
仲良く手を繋ぎながら歩く、城戸と及川さんを。