第16章 初めの1歩
澤「誰かの1歩後ろからでも全力でついて行きたかったって、言ってたよね?でも、これからは俺達と一緒に、全力で突っ走って行くってのはダメかな?城戸さんの未来、少しだけ俺に預けてみない?」
澤村先輩の言葉で、体中に電流が流れていくように感じた。
菅「大地・・・紡ちゃんの未来を預けてみない?って、それ、プロポーズっぽい・・・」
菅原先輩が真顔で言うと、澤村先輩は急に真っ赤になってアタフタしながら落ち着きを乱す。
澤「ちょっ・・・な、何言ってんだスガ!」
そう言ってパタパタと顔を扇ぎながら澤村先輩が菅原先輩を小突く。
澤「とりあえず、まぁ、そういう考えでいるって事を知っておいて、ね?」
無理やり話を纏めるように、澤村先輩がそういうのを聞いて、私は頷いた。
『澤村先輩のお気持ちは、分かりました。・・・プロポーズの事は、お受けできませんが・・・まだ誕生日も来ていないから、結婚出来る年齢にもなっていませんし』
澤「城戸さんまで・・・まったく、参ったな」
少し前までの、緊迫した時間の流れとは正反対な和やかな時間を取り戻し、話は終結に向いていた。
『あの、澤村先輩。この件に関して、少し考える時間を貰ってもいいですか?・・・ご期待に添える結論を出せるとは、約束できません。でも、考えたいんです。私は、どうしたいのか・・・』
私がそう言うと、澤村先輩は“ 分かった、待つよ ”と返してくれた。
澤「ゆっくり考えてくれて構わないからね。じゃ、影山、スガ、行こうか」
澤村先輩はそう言って立ち上がり、2人を促した。
影「ちょっとスミマセン、澤村さん」
影山が座ったまま澤村先輩に声をかけ、澤村先輩と菅原先輩はそのままの状態で影山を見た。
菅「影山?どうかした?」
影「城戸と、2人で話したい事があるんスけど
、いいっスか?」
『影山?』
その言葉に2人は1度チラリと顔を見合わせ、影山の方を向いた。
澤「それは構わないけど、でも、さすがに城戸さんの部屋だとはいえ年頃の男女を2人にするのは、だな」
難しい顔をしながら、澤村先輩が私を見ていた。
私は影山を見て、それからまだ難しい顔をしている澤村先輩を見た。
『大丈夫です、影山なら』
ひと言そう告げて、笑ってみせる。
『もし何かあったら、大きな声で助けを呼びますから。そしたら助けに駆け付けて下さい』
