第16章 初めの1歩
澤「道宮が、どうかした?」
穏やかに聞き返してくる澤村先輩に、私はなんて答えようかと模索した。
菅「あ!も、もしかしてうちのマネやるくらいなら、女バレに入りたいとか?!」
澤「えっ?!そうなの?!」
私がすぐに返事を返せなかったせいか、菅原先輩が慌てた様子で言うと、それにつられて澤村先輩も驚きを見せた。
『そういうのじゃないですから。単純に、男子バレー部の人かなって思っただけで・・・』
そこに関しては本当にちょっと気になっただけで。
そんな名前の人いたかな?くらいの興味だった。
菅「そ、そっか、良かった」
澤「いや、でも。もし、城戸さんが女バレに・・・って言う気持ちがあるなら、道宮を紹介する事も出来るからね?そうなると俺はちょっと残念だけど」
菅「大地、もう何も言わないでくれ」
澤「あくまでも可能性のひとつだよ。選手としてやっていきたいと思ってるのに、それを押さえつけてまでコッチには引っ張れないからね」
菅「でもさぁ・・・」
私は2人のやり取りを聞きながら、何となくモヤモヤとした考えに蓋をした。
『あの、お取り込み中に、すみませんけど・・・さっきも言ったように女子バレー部に入部したいとか、そういうのはホントにないですから。それからマネージャーの事も今の私には、やっぱり、』
澤「城戸さん?」
勢いつけて言葉を吐き出す私を遮るように、澤村先輩が真剣な眼差しを向けた。
澤「さっきも言ったけど、過去の事は過去の事。無責任に全て忘れろとは言わない、言うつもりもない。ひとつ分かって欲しいのは、そんな風にいろいろな過去を背負っている城戸さんと出会えて、いろんな事実を知った上で、それでも城戸さんの協力が欲しいって事なんだ」
『でも私は・・・』
澤「俺は城戸さんがバレーを捨てたとは思っていない。だって、あんなに楽しそうにボール使ってたじゃん?日向に落し物を届けに来たのだって、偶然ではないんじゃないかな?いろいろな条件が巡り合わさって、必然的に、いま、ここにいるって事」
澤村先輩に言われて、数日前の事を思い出す。
烏野へ入って、同じクラスに影山がいて。
日向君とぶつかって、自転車の鍵を拾って。
届けた先で澤村先輩や菅原先輩、そして田中先輩と出会って・・・
・・・それが、必然的なのかは分からないけど、でも、全てバレーに関係してる人達・・・
