第16章 初めの1歩
『なんか、その、すみません・・・』
菅「紡ちゃん、烏野を選んだことを謝らなくていいって。そこを謝られちゃうと、悲しいじゃん?それにしても、大地の今の言葉を道宮が聞いたら怒られるよ?」
澤「あぁ~、その辺はオフレコで頼む」
菅「ふふふ・・・大地の弱み、握ったりィ」
澤「そんな大げさな」
軽快にやり取りをする2人を見て、思わず笑みを浮かべる。
初めて会った時から思っていたけど、ホントにお互いをよく分かっている仲の良さを改めて感じた。
男同士の友情とか、そういうのは私にはよく分からないけど、でも、それだけの時間を一緒に過ごして来た結果なんだろうとも思った。
その人達が、いま、私をその仲間に誘ってくれている。
・・・私はどうしたらいいんだろう。
私は、どうしたいんだろう・・・
・・・私は・・・
影「城戸」
ひとしきり考え込んでいると、影山が包んでいる手をそのままに呼びかけてきた。
顔を振り向かせ、呼ばれた事に対して小さく返事をした。
影「お前、その顔ヤバイ。眉間にシワ刻み過ぎ、超絶ブッサイク・・・」
影山に言われて、パッとそこを押さえる。
眉間にシワで超絶ブサイクって酷くない?!
そんな思いを込めて、影山を軽く睨む。
それを見て影山は、薄くニヤリと笑い目を逸らした。
自分の方こそ、いつもいつもいつも、難しい顔してるクセに。
眉間をもう一度さすり、シワがない事をコッソリ確認して安心する。
視線を感じて前を向くと、菅原先輩はクスクスと笑いだし、澤村先輩は明後日の方を向いて肩を震わせていた。
・・・コホン、とわざとらしく咳払いをしてみせる。
『あの、お話の続き、しましょう・・・』
恥ずかしさを誤魔化すように言って、その場を凌いだ。
『その前に菅原先輩、ちょっといいですか?』
菅「ん?なになに?」
『さっき名前が出た人って、同じバレー部員さんですか?』
私は話を続ける前に、さっき菅原先輩から出た名前の人が気になり聞いてみた。
菅「さっき?あぁ、道宮のこと?それなら大地の方が詳しいよ、な?大地?」
澤「詳しいっていうか、同じ中学出身ってだけだよ。道宮は烏野女子バレー部の主将で、中学からバレーをずっとやってきたから、そういう関係でよく話とかするよ」
『そう、なんですか・・・』
女バレの、キャプテン・・・