第16章 初めの1歩
~菅原side~
ビッ・・・クリした~。
お兄さんと紡ちゃんがリビングから出た後、つい大きく息を吐いた。
慧「悪いね、紡のアホが驚かせちゃって」
紡ちゃんの、もう1人のお兄さんがオレ達に言って笑った。
「いえ、ちょっとビックリしたけど、もう大丈夫です」
影山の目を覆っていた手を外しながら答える。
慧「ところで、紡をマネージャーに欲しいって話だけど。アイツにはもう話したのか?」
菅「紡ちゃんには、まだ何も・・・」
そう言いながら、オレは大地を見た。
慧「そっか。仮に、だけど。紡が嫌だと断ったらどうする?説得すんのか?」
菅「その答えも、まだ・・・」
紡ちゃんにまだ何も話していない以上、どう答えていいのか返答に困った。
澤「もし断られても、無理な説得はしません。
ちょっと相談位はするかも知れませんが・・・城戸さんがバレーを辞めたくなったきっかけが、プレーそのものとかに該当する理由だったら、無理強いをして、辛い思いのままでマネージャーはさせたくないと思ってます」
曖昧な返答しか出来ないオレの代わりに大地が答える。
もし、紡ちゃんがマネージャーを断ったら、確かに大地の言うように無理強いはしたくない。
でも、もしほんのちょっとの可能性を許されるなら、オレは紡ちゃんにマネージャーとしていて欲しい。
・・・紡ちゃんがバレーから離れた理由って、なんだろう。
日向のレシーブ早朝特訓や、今日の様子ではバレー・・・嫌いじゃない感じがするんだよな。
厳しく日向に教える端々に、楽しそうな顔をみせてたし。
「あの、お兄さん。紡ちゃんがバレーを離れた理由って何か知ってますか?」
澤「スガ・・・」
大地に呼ばれて顔を見ると、黙って首をふっている。
慧「いいよ、澤村君。実際、オレも分かんねぇから」
「そう、ですか・・・」
慧「ただ、1つ言えるのは・・・去年の夏休みが終わって少ししたくらいだったか、紡が泣いて帰ってきたことがあったんだけど」
「紡ちゃんが?!・・・ですか?!」
慧「そ。あの日は確か、午後から急に土砂降りになった日で。傘も持たずに出かけた紡を、オレも桜太も気にかけてて、迎えにいくにもどこにいるか分からないし、どうしたもんかと思ってたら、びしょ濡れで目を真っ赤にして帰ってきたんだ」