第16章 初めの1歩
その後のお兄さんの話によると、温かいお風呂で気が緩んだのか、もう1人のお兄さんに抱き着いたままずっと泣いていて、そして泣き疲れてそのまま眠ってしまったって・・・
慧「今思えば、その頃からだな。紡がバレーしなくなったのは。それまでは引退しても後輩指導とかで部活には顔出してたっぽいけど」
「その部活で、何かあったのかな・・・」
つい、ポツリと呟いた言葉にお兄さんは続けた。
慧「それも分かんねぇな。ただホント、それっきり暫くはボールも触らねぇし、個人的に練習とかもしなくなって、そのまま受験シーズン突入だ。受験の時もいろんな所から推薦来てたのに全部断って一般受験するとか言い出すし、何考えてたんだかアイツは」
推薦全部断って一般受験?!
そこまでしてまでバレーから離れたくなったのか?!
驚きのあまり、思わず大地の顔を見ると大地は大地でオレを見ていた。
澤「あの、差し支えなければ・・・どこから?」
大地が聞くと、お兄さんは別に聞かれて困る事はないしと言って笑ってくれた。
慧「結構来てたけど・・・うちから1番近いって言えば、青葉城西?とかだったな」
澤・菅「「青城?!」」
オレ達にとってタイムリーな学校名が出た事に大地と2人で驚いた。
青城・・・あそこの女子バレー部も、男子と同じくらいレベル高かったよな?
道宮もよく、青城くらい強かったらいいのになぁ・・・なんて言っては、大地に強くしたかったら道宮が頑張るしかないぞって言われてたし。
紡ちゃん、ホントに凄い子だったんだ。
まぁ、その片鱗は見え隠れしてたけど。
「でも、推薦断って一般受験するには時期的に大変だったんじゃ?・・・その、勉強とか?」
慧「桜太はいろいろ影で心配してたけど、その辺オレは特には心配はなかったな。紡のオツムは桜太寄りだからね」
「それってどういう?」
慧「桜太も紡も、ちょっと教わるだけで飲み込みは早いし優秀だって事だよ。オレが言うのもなんだけど、桜太は高校まで普通にバレー部やってて、その割にストレートで医大入って医師免許取るとか。ホ~ント、桜太の脳ミソどうなってんだって事さ」
桜「俺の脳みそが、なんだって?」
静かにドアが開き、薄く笑いながら紡ちゃんを連れて出たお兄さんが戻ってきた。
慧「いまみんなに桜太と紡の脳みそについて語ってた所だよ」
