第16章 初めの1歩
桜「それにさっきのは、俺も悪いしね。紡に来客があるからって伝えてなかったし」
『でも、この状況が・・・いつもの桜太にぃの・・・お説教のパターン、だったり』
そう、桜太にぃがお説教する時はだいたい私をベッドかソファーに座らせ、私と同じ目線になるように自分は床に座り・・・がお決まりのパターン。
だから私もこの状況下でお説教が始まると予想していた。
桜「あはははは、なるほどね。そう言えばそうだったね。じゃあ、折角だからお説教しようか?」
いたずらに笑いながら、桜太にぃは座り直した。
『いぇ、出来ればお説教は遠慮したいです・・・』
私が小さく返答すると、桜太にぃは再び笑い出した。
桜「まぁ、お説教・・・とまではいかないけど、1つあることはあるけどね?」
『な、なに?』
お説教・・・と、聞くとどうしても身構えてしまう。
桜「慧太から聞いたけど、今日は随分とハードだったらしいね?」
『ちょっとだけ・・・かな?』
桜「自分を追い込んで体動かすのは、別に反対はしない。そうする事で見えてくるものや掴めるものがあるのは俺も分かってるしね。だけど、」
『怪我だけは気をつけます・・・』
ポツリと言うと、桜太にぃはそれを聞いてフッと小さな息をつく。
桜太「わかってるなら、良しとしよう」
そう言って、桜太にぃは救急箱を前に押し出す。
桜「それじゃ、足出して。慧太に聞いたよ?まずは右膝から」
言われるまま足を伸ばす。
桜太にぃは膝の可動や、その周辺を念入りにチェックしたあと、ハサミとと湿布を取り出し、不快にならない様に形を整えたり切込みを入れて貼ってくれた。
桜「次は左肩。とりあえず1回上着脱いで?」
桜太にぃは立ち上がり、部屋のカーテンを閉めた。
『前から思ってたんだけど・・・』
桜「ん?」
桜太にぃが左肩の可動などをチェックしながら返事をくれる。
『桜太にぃって、小児科にいるのに、こういう応急処置っぽいのとかするの?』
私の素朴な質問に、フッと笑いながら桜太にぃが湿布を用意する。
桜「今は、小児科にいるだけだよ。医大を卒業して医師免許は取れてるけど、この仕事はそれですぐ一人前じゃないからね」
『今は・・・って?桜太にぃずっと小児科にいるみたいだから、このまま小児科の先生になるんだって思ってた』