第16章 初めの1歩
その格好・・・って、顔を背けられても・・・
少しずつ自分の姿に視線を動かしてみる。
キャミソールに・・・ホットパンツに・・・
別に、普通・・・だけど・・・?
え?
えっ・・・?
数秒の時間を要して、とある解答に行き着く。
『わぁぁぁぁっ?!』
思わずドライヤーを放り出し、桜太にぃの影に隠れる。
『ち、ちち、違うから!着てるから!着てないように見えても着てるから!!ちゃんと服着てますからっ!!!』
私の慌てっぷりに慧太にぃはゲラゲラ笑い、桜太にぃは自分が着ていたパーカーをサラリと脱いで私に羽織らせた。
自分の体温が急上昇していくのが分かる。
焦りと恥ずかしいのとて、ハフハフと呼吸が乱れる。
『桜太にぃ・・・』
どうしていいか分からず、桜太にぃに助けを求めると、救急箱を手に持ち私を背中に隠したままリビングのドアを開けた。
桜「ちょっと、支度させてくるから。それまで慧太、ここ頼むね?」
そう言って桜太にぃは私をリビングから押し出しドアを閉める。
そして私の頭をポンッとしてから、私の部屋まで一緒に向かった。
私の部屋に入り、桜太にぃが後ろ手でドアを閉める。
スマートにベッドに座るよう促され、言われる通りにベッドに腰掛けた。
桜「さて、と」
桜太にぃに目の前に座り、真っ直ぐ私を見る。
私はこれから始まるだろう長い長いお説教に、体を構えた。
桜「紡」
名前を呼ばれ、体にギュッと力が入ってしまう。
『ご、ごめんなさいっ!これからは用心して服をびっちり着てから脱衣所を出るようにしますっ!』
先に謝ったモノ勝ち・・・という訳では無いけど、桜太にぃのカミナリが落ちる前に少しでも謝っておこうと思った。
桜「え?」
ひと呼吸置いて、桜太にぃが声を漏らす。
恐る恐る顔をあげると、軽く驚いた顔の桜太にぃと視線が合った。
『・・・え?桜太にぃ、怒るんじゃないの?』
私が言うと、桜太にぃは救急箱に手をついて笑い出した。
桜「どうした紡?なんでそんなに謝る?」
よほど笑いのツボを刺激したのか、いつまでも笑っている。
『えっ、だって、こんな格好でリビングに・・・』
桜「その事か。それは別に怒ってなんかないよ。むしろバスタオル1枚とかじゃなくてよかったな、位にしか思ってないから」
そう言いながらも、まだ笑っている。