第16章 初めの1歩
・・・今日はちょっと、体を酷使し過ぎたかも。
シャワーを浴びながら、床に打ち付けた膝を撫でる。
これはバレたら桜太にぃに怒られる・・・絶対。
穏やかに、そして静かに懇々とお説教をされる姿を予想して軽く身震いする。
普段はあんなに優しくて、いつも味方についてくれる桜太にぃだけど、怪我に関しては厳しいんだよなぁ。
はぁ・・・と大きくため息をつく。
シャワーから出たら、バレて怒られる前に自己申告して湿布でも貼っとこう。
キュっとレバーを押し、シャワーを止める。
『あっつ~・・・』
散々動き回った後に熱いシャワーを浴びると、さすがに体から湯気がモゥモゥとあがる。
ま、後は家でのんびりするだけだしラフな格好でいっか。
そう思って手早く服を着る。
こんな暑いのにドライヤーとか、有り得ないでしょ。
タオルで髪を巻きながら出ようとするも、後から慧太にぃに乾かせ~と追いかけ回されるのも面倒臭いなと思い直し、髪を乾かし始めた。
半分くらい乾いてきた所で、突然ドライヤーが止まってしまう。
あれ?
コンセント・・・は繋がってる。
とりあえず1度コンセントを差し直し、スイッチをカチカチと動かしてみる。
故障?
でも、つい今さっきまでは普通に使えてたよね?
もう1度スイッチを切り替えてみる。
パチンっ!
『わっ?!』
小さな火花と共にドライヤーからうっすら煙が出ていた。
私は急いでコンセントを抜き取り、焦げ臭いドライヤーを手に脱衣所から飛び出した。
バタバタと騒がしく廊下を急ぎ、リビングのドアを音を立てて開ける。
ちょうど目の前に救急箱をカウンターに置く桜太にぃの姿があった。
『あっ!桜太にぃ、ドライヤーがショートしたみたい!パチンっていって、煙出たっ』
今しがた起きた出来事を早口で話す。
慧「お、お前、なんつー格好で?!」
『だってシャワーから出たら暑かったんだもん!あとでちゃんと着替え、る、から・・・』
そう反論しながら慧太にぃの方を向くと、そこには・・・
『えっ?えぇっ?!影山と菅原先輩?!・・・と澤村先輩も?!どうして?!』
澤「あっ・・・と・・・お、お邪魔してます・・・」
菅「紡ちゃん、その格好・・・あっ、影山見るな!」
菅原先輩はそう言いながら影山の目を手のひらで覆い、自分も横を向く。
澤村先輩も背中を向けた。
