第16章 初めの1歩
澤村君の真っ直ぐな気持ちに、引っ張られそうになる。
俺はひと呼吸置いて、もう1度話に耳を傾けた。
澤「今回の新部員は、なかなかの曲者揃いであり、でも、まとまれば今の部は飛躍できると思います。その仲間の1人に彼女も加わってくれたら、更に変わると思うから・・・これが俺の答えです」
紡は、本当に周りから大事にされているなと感じる。
実際マネージャーは本人同士の交渉で成立してもそれが普通で、家族にはマネージャーやることになったから頑張る!位の報告だけで終わってしまう方が多いだろう。
それなのに、まぁ、キッカケはともかくとして、本人よりも先にそういった話を聞かせてくれる彼らがいる。
紡は、どう思うだろうか。
もちろん紡がやると言えば、これまで通り背中を押してサポートに回ることはやってあげられる。
でも、嫌だ・・・と言えば、無理強いはしない。
全ては、紡の考え次第・・・ってところかな?
「君達の気持ちは分かった。俺としても紡がいつも笑っていられる日常がいいと思うからね。いま紡はちょっと手が離せない・・・と言うか、夢中になってる時間だからこの場にはいないけど、紡が納得してマネージャーをやると言うなら、俺はできる限りのサポートはするから」
俺がそう言うと、澤村君は安堵の顔を見せた。
影「あの、桜太さん。城戸はいまどこにいるんですか?」
いつまでも紡が顔を出さないのを疑問に思ったのか、影山君が聞いてくる。
「紡?・・・ふふっ・・・影山君なら、わかると思うけどな?」
凄くわかりやすいヒントを出すと、影山君はすぐにピンと来たらしく、ソワソワし始める。
「紡がどれだけバレーが好きか、知りたい?」
先輩2人を、言葉でくすぐってみる。
お互いに1度視線を交わし、澤村君がどういう事ですか?と聞いてくるのを笑いながら受ける。
「紡にバレたら怒るから、ナイショだよ?ちょっとついてきて?」
そう言って席を立つと、3人は黙って続けて席を立ち、後ろを着いてくる。
影山君は何度もコートに降りてるから、これからどこへ行くのかは分かっているようで、階下へ進む度に顔が明るくなるように見えた。
目的の場所へ着くと、扉は閉まっているが、大きくくり抜かれたガラス窓から中を見る事は出来るようになっている。
「バレないように、静かにね?」
小声で言って、3人に場所を譲る。