第16章 初めの1歩
「ゴメンゴメン。でも、実際に見た訳じゃないけど、この記録からそれがちゃんと分かるよ?・・・これ、紡が書いたんでしょ?」
菅「凄い・・・大地は何も言わずに渡したのに・・・」
「分かるよ、さすがに。長年ずっと紡の勉強を教えてきたし、それにこの書き方は間違いなく、紡の書き方だよ」
俺が笑いながら言うと、それでも凄いと菅原君は言う。
「それで、本題に入ろうか?今日、話を聞いて欲しいって言ってたのは、この記録ノートから察するに・・・」
言いながら澤村君を見る。
澤「はい。お察しの通り・・・だと思います。ここにいる菅原と影山とは違って、俺は今日初めてに近い状態ですが・・・その数時間の様子やノートを見て、彼女にマネージャーとしてバックアップして欲しいと思いました」
やや強ばった顔をしつつ、真っ直ぐに伝える姿勢は、やはり部の代表として意志を固めたものなんだろう。
「・・・随分と、ダイレクトに来たね?」
ちょっと意地悪に返してみる。
すると3人ともハッとして、お互い顔を見合わせていた。
澤「すみません、ちょっと切羽詰まってるんで・・・申し訳ないです・・・」
「構わないよ。じゃあ、意地悪ついでに、ひとつ、聞いても?」
澤「・・・はい。大丈夫です」
俺は小さく息を吐き、足を組み替えた。
「なぜ、紡をマネージャーに?今の部にはマネージャーはいない?」
純粋に、その理由が聞いてみたかった。
ただ単に、マネージャーが欲しいなら勧誘活動をしていれば1人くらいは見つかるだろう。
もし現にいるならば、部員数が大幅に増えたなどでマネージャーを増やしたい・・・という理由もあるだろう。
澤「現在は、清水という女子マネージャーが1人います。でも、俺達と同じく3年で、いずれは引退する時期が来ます。今年の新部員は、ここにいる影山を含めた4人で、全体の部員数としても決して多くはないです。でも、彼女の存在が必要だと思うから・・・」
「それは、今いるマネージャーの後釜が欲しいって事?」
会話の切れ目に、言葉を放る。
俺の言葉に、澤村君はまたすぐに答えた。
澤「後釜が欲しいかと聞かれたら、それは必要です。だけど、今回の場合はそれだけじゃないです」
「と、いうのは?」
澤「俺は城戸さんが、その、直感的に今も、そしてこれからも必要だと思うので」