第16章 初めの1歩
程よくして3人が戻って来たところへ、それぞれにテーブルにつくように促す。
「部活終わりだとお腹空かせてると思って。遠慮なく食べてね」
それぞれの前にBLTサンドと砂糖を添えたコーヒーを置く。
澤「急な訪問なのに、こんな・・・」
「いいのいいの、それに俺は作るの好きだから、食べて貰えると嬉しいし。ほら、影山君みたいにね」
そう笑うと、既にサンドイッチをほうばる影山君を見て2人は盛大なため息を吐いた。
「ま、食べながらでいいから話そうか?」
彼らにもう1度すすめて、自分も椅子に座る。
すると澤村君が鞄から1冊のノートを取り出し、俺に向ける。
澤「これを、見て貰えますか?」
「これは?」
澤「今日、俺達が部活内の時間で行なったミニ試合の、記録です」
そう言われ、差し出されたノートを開く。
紡の字、だよな?
紡が書いたものなのか?
パラパラと軽く捲り、なるほどねぇ、とこぼす。
「ちょっと、じっくり見てもいいかな?その間に食べてていいから」
そう言って澤村君に了承を得ると、俺はノートをに再び視線を落とす。
見れば見るほど、面白い内容だ。
初めのうちは得点に繋がる攻撃がつかない、スパイクまで運べてもブロックで叩き落とされ、打ち込めたとしても、うまくレシーブされ反撃される。
あれ?
相手チームのメンバー名に月島、山口、澤村・・・って。
へぇ・・・
まぁ、紡の記録を見る限りは日向君の特訓は無駄ではなかったという事まで読み取れる。
ページを送る度に段々と攻撃が形になりつつあり、そして、クイック?
うちに来てた時にはそんな感じではなかったけど。
ゲームの中で、成長した訳か。
まだ、荒削りの様だけど。
最後までじっくり見て、そっとノートを閉じた。
それと同じくして、3人も食事を終えた。
3人ともきちんと挨拶をして、菅原君が皿をまとめ始めるのを見て、そこまでしなくていいよ、と制す。
俺が顔の前で手を組んだまま、何も言葉をださないのを不安に感じたのか、澤村君が第一声を切る。
澤「ノート・・・どうでしたか?」
真っ直ぐな目で澤村君が俺を見る。
「そう・・・だね。君がレシーブが凄く上手いって事が、良く分かったよ」
ニコリと笑みを浮かべながら言うと、澤村君は目を手にして固まった。
澤「えっ・・・と・・・?」