第16章 初めの1歩
ましてや来週、青城に行くのにか?
黙り込み、考えを巡らせる俺を見て2人の空気が重くなるのが分かる。
澤「影山は・・・これに関してどう思う?」
「俺・・・ですか?」
菅「もしかして影山は、反対?」
「そうじゃないですけど・・・でも」
なかなかハッキリと賛成しない俺に、2人とも言葉を詰まらせていた。
この場で論争をしても仕方がない。
俺はフッと小さく息を吐き、澤村さんを正面から見た。
「オレは、城戸がマネージャーやるってんなら、それに賛成します。でも、やりたくないって言うのなら、それにも賛成します。それじゃダメっスか?」
俺は、あの小さな手を震わせてまで打ち明けてくれた城戸を・・・俺達の勝手で引き戻したくはない。
それは、城戸が岩泉さんの手から離れたからではなく、俺がそうしたいって思うから。
・・・そりゃあ勿論、一緒に居られる時間が増えるのは、まぁ・・・俺としても嬉しいケド?
菅「全ては紡ちゃん次第ってことか・・・」
澤村先輩と菅原先輩が顔を見合わせ頷く。
澤「分かった。俺も無理強いをするつもりはないから、そんな怖い顔するなって」
言われて初めて、自分の顔が強ばっているのに気がつく。
「それで、俺が呼ばれた理由ってなんスか?」
菅「あぁ、それはね。紡ちゃんの家を教えてもらえないかな?って。連絡先は分かってるんだけど、自宅まではさすがに知らないからさ」
澤「もちろん、先に連絡が取れてから、の、話だけどね」
「まぁ、知らなくはないッス」
そう答えると、菅原さんが城戸に電話してみるって言いながら体育館の外へ出て行った。
澤「影山、なんか変なこと頼んじゃってスマンな」
「別に変だとか、思ってません。ただ・・・俺は城戸に、バレーを好きでいて欲しいだけッス」
数分後、菅原さんが微妙な顔して戻って来た。
澤「どうだった?」
菅「いや、それがさぁ。出ないんだよ、紡ちゃん。2回かけたんだけど、両方とも留守電になっちゃって」
早くもお手上げ状態と言わんばかりのジェスチャーを交えて、菅原さんは首を振る。
菅「さすがに紡ちゃんのお兄さんの連絡先までは知らないからなぁ。何度か顔合わせたくらいだし」
城戸のお兄さん?
そっか、城戸が電話出ないから、そっちに聞いてみればいいのか。
そうすれば、なぜ電話に出ないのかわかるかも。