第16章 初めの1歩
でも・・・目的のペットボトルには当たらない。
所詮こんなもんか・・・
現役時代のように毎日練習している訳ではなかったから、そう簡単にはいかないか。
ため息をついて、ボールを集めに歩く。
慧「なんだぁ?もう諦めておしまいか?」
背後からの声に振り返ると、いつの間にかに来ていたのか、慧太にぃが壁に寄りかかって腕組をしながらニヤリと笑っている。
『もぅ。慧太にぃはホント、いちいちうるさい・・・』
わざと悪態をつき、ボールを拾い続ける。
慧「やるなら、出来るまで・・・ってのが、紡のポリシーだったんじゃないのか?」
慧太にぃの言葉に、ボールを拾う手が止まる。
そっか・・・
そうだよね・・・
いつの間に私、諦めが早くなってたんだろう。
やるなら、出来るまで。
今までその思いを抱えながら、いつだって達成できるまで練習を重ねてきた。
《 何事も諦めが肝心 》
そんな言葉は、嫌いだ。
今まで何度だって、バレーボールで壁に阻まれても、負けたくないと思ってた。
《 壁を乗り越えられなければ、他の方法を探せばいいじゃないか 》
小さい時に烏養のじっちゃにも励まされ、壁を壊して前に進む事も覚えた。
私は最後のひとつを拾い上げ、元の位置まで戻る。
『今からもう1回やろうと思ってたんですぅぅぅ!!』
慧「そぅそぅ、傍から見て諦めの悪い所が、紡のいい所でもあるんだからな」
『諦めの悪いって、なんか嫌な感じ~。まるで私が聞き分けないみたいじゃん・・・』
言われた言葉に納得出来ない感じを見せ、ちょっと拗ねる。
慧「あれ?聞き分け良かった事なんてあったっけ?」
ニヤニヤといつまでも笑う慧太にぃを1度睨んで、1人コートに入る。
絶対、全部のペットボトルに当てる。
それまでは他の練習は・・・しない!
慧「今日、どこで何を見て刺激を受けたかは知らねぇケド、お前の気が済むまで付き合ってやるから」
慧太にぃがそう言いながら、コートに入ってくる。
『その言葉、後悔しないでよ?』
私はそう返し、再びボールを上げた。