第15章 3対3 + 1
視線を上げて、もう1度影山を見ると、それに気づいたのか影山も視線を上げ、こっちを見る。
どうするの、影山?
どうするったって、俺にはどうしようもないだろ。
視線だけで言葉を繋ぎ合う。
そんな中、静まり返った体育館に菅原先輩の声が響いた。
菅「いいじゃないか、こんなチャンスそうないだろ?」
田「でも、烏野の正セッターはスガさんじゃないっスか?!」
田中先輩の言葉に、菅原先輩は1度スッと目を閉じ、落ち着いた声で続けた。
菅「オレは、日向と影山の攻撃が4強相手にどれだけ通用するか、見てみたい・・・」
菅原先輩はそう言って、澤村先輩とアイコンタクトを交わした。
澤「先生、詳細をお願いします」
澤村先輩の言葉で、部員のみんなは条件を飲むことを覚悟したかのように先生に体を向けた。
武「日程は急なんだけど、来週の火曜日。放課後で時間もないから、一試合だけ。車は僕が用意するから、みんな授業が終わったら遅れないようにね?」
先生の話が終わると、部員はそれぞれ練習の用意に入るため動き出した。
菅原先輩にノートを渡そうと思ったけど、さっきの話の流れからか、まだ澤村先輩と何かを話している。
『縁下先輩、お願いがあるんですけど・・・』
まだ隣にいた縁下先輩に声をかける。
縁「ん?なぁに?」
『これ、さっきの3対3の試合を記録した物なんですけど、休憩中にでも澤村先輩か菅原先輩に渡して貰えませんか?』
言いながらノートを縁下先輩に向けた。
縁「別にいいけど、自分で渡さなくていいの?」
受け取りながら縁下先輩が問う。
『本当はそれがいいんですけど、今は・・・』
菅原先輩達の方を見ながら言うと、縁下先輩も、なるほど、と納得してくれノートを受け取ってくれた。
『すみません。ありがとうございます』
縁「これくらい朝飯前だよ、任せて」
にこやかに笑い、快く頼まれてくれた。
『それじゃ、私はそろそろ帰りますね。皆さんに練習試合、頑張って下さいって伝えて下さい』
縁下先輩にそう言って、私は手早く荷物をまとめて体育館を出た。
帰る道すがら、頭の片隅から練習試合の事が離れない。
青葉城西。
あそこのセッターは、恐らく、いや、間違いなく及川先輩だ。
そうするとスパイカーとして出てくるのは、やっぱり・・・
モヤモヤと考えながら、家路についた。