第15章 3対3 + 1
縁下先輩は言いながら私の手元からジャージを取ると、そのままサッと着てしまった。
『本当にいいんですか?もし急ぎで必要だからとかなら、今から帰ってすぐに洗って持って来ますけど・・・』
縁「大丈夫だって。むしろ女の子が1回着てくれたっていうプレミアがついたくらいだよ」
柔らかく笑いながら、縁下先輩が言った。
それなら、と、笑いながら私も返し、ノートを菅原先輩に渡そうかと姿を探した所で、影山が急に大きな声を出した。
影「おい、日向!休んだか?!休んだな?!」
私も縁下先輩もビックリして、声のする方を見た。
影「もう1回クイックの練習するぞ!さっきの感覚残ってるうちに!!・・・田中さん、ボール出しお願いします」
田「もう動くのかよ・・・」
日向君は影山にズルズルと引きずられて行き、その後から田中先輩がボールケースを持ってついて行く。
縁「あの2人は元気だね~。さっきあれだけ動いて座り込んでたのに。若いって凄いな」
『縁下先輩、おじいちゃん発言みたいですよ?』
カラカラと笑いながら言うと、縁下先輩もつられて笑う。
『影山達はあんなに元気回復してますけど、田中先輩はまだ回復してませんね?いつもとっても元気なのに、何だかおとなしい』
縁「田中はあれくらいでちょうど良いんだよ。普段ほんっとにうるさいんだから。とにかくうるさいし、誰かれ構わずガン付けるし、全く・・・」
縁下先輩は腕を組みながら、ホント参るよ・・・と言い加えた。
『誰かれ構わずって・・・そんな事ないで・・・あ!そう言えば初めてここへ来た時、私もジリジリと詰め寄られました!』
縁「えぇっ?!・・・ホント見境ないな田中は」
うんざりした顔で、縁下先輩が田中先輩をみる。
『でも、顔見知りになってからは、いろいろと優しかったですよ?それは菅原先輩もですけど』
会話の流れの中で菅原先輩の名前を出し、あっ、とノートの事を思い出す。
菅原先輩は・・・と姿を探すと、月島君や澤村先輩達と何やら話をしている。
別に菅原先輩に頼まれた訳じゃないから、縁下先輩に預かって貰って後で渡して貰おう。
『あの、これなんですけど』
そう言い始めた所で、体育館へ走ってくる誰かの足音が聞こえ、そしてガラガラッ!と大きな音を立てて体育館の扉が開けられた。