第15章 3対3 + 1
そこには、“ 男子バレー部 ”と書かれたノートを軽く丸めて握る清水先輩・・・
痛そう・・・
菅原「清水~、今のはちょっと痛かったぞ・・・」
うっすら涙目の菅原先輩が言うと、清水先輩は小さく息をついた。
清「菅原。さっき言ったよね?公開セクハラやめてあげてって」
菅「だ~か~ら~、セクハラじゃないって」
清「菅原がそう思ってても、ダメ。諦めて」
清水はサクッとそれだけ言うと、私の手を引いてその場を後にした。
『あの、すみません。お世話になって・・・』
申し訳なくそう言うと、清水は先程とは全然違う優しい顔で私を振り返る。
清「大丈夫。ああいう時は、アレが1番効くから。田中も同じ。また何かされたら、容赦なくアナタもやりなさい」
フフフッと笑いながら私に言うと、雑務があるのか澤村先輩に呼ばれて行った。
やっぱりキレイな人だ・・・
私は椅子を抱えて体育館の端に移動して、自分で記録したノートをまとめる事にした。
パラパラとノートを開くと、試合開始の頃は、見事なまでにスパイク成功率は低い。
鞄からスマホを出し、簡単にそれぞれの計算を始めた。
・・・よしっ!終わった!
記録のまとめが終わると同時に、体育館ステージ前で歓声が上がる。
なんだろうと思い顔を上げると、新入部員4人が一列に並び、
【 烏野高校 排球部 】
と、書かれた揃いのジャージを羽織っていた。
私は、縁下先輩に借りている同じ物をそっと脱いだ。
特に汚れた訳じゃないけど、洗濯して返すのが筋だよね。
そう思いキチンと畳んで手元に置く。
もう一度、それをそっと撫でてみる。
本来なら部外者が袖を通す事なんてない物を、少しの間着られたんだから・・・と、思いを馳せる。
心配事もあったけど、なんか、楽しかったな・・・
私は立ち上がり、みんながいる所へ歩き出した。
『縁下先輩』
声をかけると縁下先輩はすぐに気がついてくれ、歩み寄る私にわざわざ足を向けてくれた。
『これ、ありがとうございました。すぐに洗ってお返ししますので、出来ればクラスとか教えて頂けると・・・』
私がそう言うと、縁下先輩は軽く笑顔を見せた。
縁「洗濯だなんて、そんなの気にしなくて平気なのに」
『でも、1度袖を通してますから』
縁「俺が気にしてないんだから平気。はい、貸して?」