第15章 3対3 + 1
「そう言う時はさ、こうやって、ギュッて押さえながら入るといいよ」
言いながら、城戸さんの手の上から俺の手を重ねる。
「それでさ、湯船に入ったら、指を1本ずつ離すとあんまり痛くないんだ。騙されたと思ってやってみて?」
すると急に城戸さんが笑い出す。
何か変だったかな?と顔を見ると、クスクス笑いながら俺の方を見た。
『縁下先輩って、楽しい人ですね』
「えぇ、俺の印象ってどうなってるの・・・」
『今朝初めて声をかけられた時は、マジメで優しそうな人だなって思ったんですけど』
「あれ?もしかして、その第一印象が覆っちゃった感じ?」
『えっ?違いますよ?最初の印象に楽しい人ってプラスされました』
「それは良かった」
お互いに笑い合いながら、俺は何となく心の奥がムズ痒い感じがした。
菅「な~んか楽しそうだけど、何の話~?」
横からひょこっと菅原さんが覗いてきた。
「いえ、城戸さんがさっきのレシーブ特訓でケガしてたので、ちょっと手当を・・・」
菅「えっ?!マジ?!全然気が付かなかったよ?!」
『ケガっていっても、ほんの少し擦りむいただけですから。私自身でさえ、縁下先輩に言われて気がついたくらいだし』
城戸さんが言うと、菅原さんが俺をチラッと見た。
菅「ふ~ん?縁下がねぇ・・・」
「何ですかその、訝しげな目は」
菅「い~や?オレは縁下を信じてるよ」
“ 第2セット、始めまーす ”
成田の声で、全員にピリッとした空気が流れる。
俺は使っていた物を救急箱へと戻し、得点版の位置に立つ。
ちゃっかり城戸さんの横に立つ菅原さんを見て、フッと息を吐いた。