第15章 3対3 + 1
“第2セット、始めまーす ”
その声に影山と日向君は、相手チームを真っ直ぐ見据えていた。
私は膝の手当をしてくれた縁下先輩に、もう1度お礼を言ってから椅子に座る。
菅「紡ちゃんは、どう見る?この2セット目」
菅原先輩がコートをジッと見ながら私に問いかける。
『勝ちますよ』
私は菅原先輩を見あげながら、真っ直ぐに、ストレートな言葉で返した。
菅「おっ、なかなか強気な発言だね?」
『だって私、あの2人を信じてますから』
私がそう答えると、菅原先輩は私を見て微笑んだ。
菅「そうだね。監督兼コーチ兼、勝利の女神だからね」
まるでイタズラっ子のように菅原先輩が私を見て笑う。
菅「紡ちゃんに信じてるって言われたら、期待を裏切ったりは出来ないね」
『また監督兼とか言う』
私がそう返すと、菅原先輩は私をまっすぐ見た。
菅「あの2人が無事に入部して、公式戦バンバン出るようになって、でも、それでも・・・仮に、だけど・・・」
菅原先輩がそこまで言いかけた時、試合が始まるホイッスルが鳴った。
さっきまでの2人とは、まるで違う空気を纏っている。
頑張れ!
強く願い、記録を付けられる用意をする。
『菅原先輩?さっき言いかけてたことって?』
コートに見ながら菅原先輩に続きを問う。
菅「あぁ、なんでもないよ」
そう言って菅原先輩は私の頭に手をポンッと置くと、得点板の方へと歩いて行った。
何でもないと言われ、私も特にそれ以上は気にすることもなく試合に集中する。
明らかにさっきとはゲームの流れが違う。
日向君のスパイクは、相変わらず月島君に止められることはあるけど、でも、成功率もグッと上がっている。
それに田中先輩だって。
影山と日向君の超速攻に気を取られ、ブロックを日向君側へと持ってくる隙に、影山が田中先輩にトス。
田「いらっしゃぁ~い!!!」
田中先輩の意味不明な叫びも健在だけど、ブロックもつかずに得点へと繋がるスパイクを打てる事も多くなった。
1セット目と違い、1点ずつ確実に取れている。
段々と点差が開き始めてきた。
木「影山、確かにスゲーけど、凄い神経すり減らしそうだな、あの精密なトス」
縁「日向も普通の何倍も動き回って、しんどそうだ」
背後から先輩達の声が聞こえてくる。
確かに見ているとそう思う。