第5章 霹靂
新学期が始まった、ある土曜日。
ハジメ先輩から話したいことがあるからって連絡が来て、私はよく寄り道した公園で待ち合わせた。
慌てなくていいからと言われていたけど、だからといって長い時間ハジメ先輩を待たせるわけにも行かないので手短に支度を済ませ出かけた。
公園へ入り、小高い丘を上がり始めたところでハジメ先輩の姿が見えた、
ベンチに座り、組んだ足の上でグッと握った手を置き、じっと遠くを見つめるハジメ先輩・・・
いつもならハジメ先輩の姿を見つけるや否や、声をかけながら駆け寄る事が多いけど、 どうしてだか、私は立ち止まり前に進む事が出来なくなっていた。
ハジメ先輩・・・どうしてそんな顔をしているの?
思い返せば、さっき連絡が来た時も少し普段と様子が違った気もする。
そんな様子のハジメ先輩を見つめたまま、私は胸の奥をかき混ぜられるような思いに襲われていた。
どうしよう・・・前に進んじゃいけない気がする。
足が急に重くなり、最初の1歩が踏み出せない。
でも、後戻りする事も出来ない。
一瞬強く吹き抜けた風に煽られた髪をまとめていると、不意にハジメ先輩がこちらに視線を向けた。
お互いに見つめあったまま、ただ時間が過ぎていく。
『お・・・待たせ、しちゃいました・・・』
乾いた喉の奥から、むりやり声を絞り出す。
「・・・いや・・・そんなに待ってない。気にするな」
そう言いながら、ハジメ先輩が立ち上がり私のいる方へ歩いてくると、そっと手を引き、ハジメ先輩がいたベンチまで誘導される。
促されるままにそこへ座ると、お互い視線を合わせずに、ただ前を向いたまま時間だけが過ぎていく。
どれくらいの時間が経っただろうか・・・大きく息をついたハジメ先輩が、ゆっくりと話し出した。
「今日、話したいことって言うのはだな」
その言葉に、私の体がピクンっと跳ねる。
震えてくる手を膝の上で握り、私もハジメ先輩の方に体を向けた。
『あのっ!・・・ハジメ先輩がこれから何を言おうとしているのか、何となく分かります。どんな事を告げられても、受け入れようとも思います。でも・・・』
そこまで言って、言葉に詰まった。
きっとハジメ先輩の事だから、いろいろ考えて決めたことなんだと思う。
それを覆すほどの打開案を持っていない。