第15章 3対3 + 1
この人は、こんな顔もするんだ?
普段からニコニコとして、細やかな対応が出来る所ばかり見てきた。
でも、今は違う。
俺の中で、ひとつの仮説があがる。
もしかして菅原さん・・・
あっ!と顔を上げ、もう1度菅原さんの顔を見る。
勢いづいて見たせいか、菅原さんが俺に気付いた。
菅「縁下、どうかした?」
いつもの笑顔で、いつもの口調で何気ない問いかけ。
「いえ、別になにも」
軽くそう言って、俺はまた日向達の方へ視線を移した。
お、日向がレシーブでちゃんと返してる。
けど・・・どっちに向かうにしてもボールの距離が足りない。
その距離の足りなさに気がついて、あの子が走り出した。
間に合うのか?!
俺がそう思った瞬間、キュッとヒザを床に滑らせながらレシーブで拾う。
今のは絶対、ヒザ痛かったと思う。
サポーター無しでヒザ滑らせるとか、ないだろ?
ボールは影山へと渡り、もう1度日向へ打ち込まれる。
日向が上手くヒザを使いボールの勢いを押さえながらレシーブ出来た!
ボールはいい感じに放物線を描きながら、あの子と影山の真ん中辺りに向かっていく。
影山が1歩動き出した所を、あの子がそれを止め、自分が落下点に動く。
『日向君!ご褒美ね!』
それを聞いた日向が高く上がって行くトスを見て嬉しそうに走り込み、生き生きとしながらスパイクを打った。
大地さんの声を合図に、3人がコートから戻ってくる。
それを横目に確認しながら、俺は救急箱から消毒液とガーゼ、それから絆創膏を取り出した。
振り返ると2人の背中を押しながら、声をかけるあの子。
それに答えるように影山と日向があの子にタッチをしてコートに入っていくところだった。
仲良しなんだな、ホント。
微笑ましく思いながら近づいて行き、あの子に声をかけた。
「はい、君はそのまま椅子に座って?」
『えっ?』
「いいから座る。さ、早く」
なんだ?と、不思議そうな顔をしながら、ゆっくりと椅子に座るのを待って、消毒液のフタを開けた。
『どこもケガなんてしてないですよ?』
そう言って身構えるのを笑いながら見て、ヒザを指さした。
「さっき、床にヒザを擦ってたでしょ?ちょっと見せて貰える?」
『えっ・・・と、でも・・・』
「早く終らせないと、試合始まっちゃうよ?ゆっくり見たいでしょ?」