第15章 3対3 + 1
タオルで汗を拭きながら、澤村先輩は穏やかに言った。
『あの、さっきはすみませんでした!大事な試合中だって言うのに、その、勝手に割り込んでしまって・・・だから、ホントにすみませんでした』
ただでさえ小さい体を半分に折り曲げる勢いで頭を下げる。
ほんの何秒かの時間が、物凄く長く感じた。
菅「つ、紡ちゃん?!そんなに頭下げなくても大丈夫だから・・・ほ、ほら、大地も!」
菅原先輩に言われ、澤村先輩がフッと笑った。
澤「城戸さん・・・だったよね?」
その問いかけに、頭を下げたまま返事を返す。
澤「えっと、とりあえず頭をあげてくれないかな?」
そう言われ、ゆっくりと頭を上げて澤村先輩と視線を交わす。
何も言わず、ずっと視線が合ったままなのが気まずく、かといって、視線を逸らすわけにもいかないから、先に言葉を出した。
『あ、あの・・・怒って・・・ます、よね?』
恐る恐るそう言うと、澤村先輩は大きく笑い出した。
澤「この前も思ったけどさ、俺ってそんなに怖く見える?さっきの事は、別に怒ってなんかないよ。月島の挑発や煽りも、ちょっとやりすぎだったし、ね?」
チラリと近くにいた月島君を見ると、あからさまに不満気な顔でこっちを見ていた。
『でも、その挑発や煽りに、乗っかっちゃったのは私なので・・・』
更に謝ろうとそう言うと、私の後ろから日向君の声がした。
日「キャプテン!!」
振り返ると、日向君があっという間に走り寄ってきた。
『日向君?』
日「キャプテン!!さっきの事で城戸さんが怒られるなら、オレも一緒に叱られます!オレと影山のせいで城戸さんが怒られるのはイヤだから・・・」
影「・・・ぅす」
いつの間にかに、影山も?
3人並んでシュンとしていると、澤村先輩は更に笑う。
澤「だから、怒ってないって。それより、日向達が頑張る姿見て、どう思った?」
頑張る姿、見て、どう思ったか?
私は一歩前に踏み出し、影山と日向君の顔を交互に見て、澤村先輩の顔を見た。
『どう・・・っていうのは、あの・・・?』
澤「ん?率直に感想とか、あとは、今見ていたプレーの中で、改善点とかあったら・・・」
あぁ、なるほど!
そういう事か、それなら。
『分かりました。まず、日向君から。1セット見てきた中で、改善すべき所は盛り沢山、お腹いっぱいです』