第15章 ３対３ ＋ １

私は何も声をかけることも出来ず、ただ、黙ってそれを見ていることしか出来なかった。

“ 打てないなら、交わせ ”

影山はさっき、日向君にそう言っていた。

交わす･･･日向君の反射スピードがあれば、ブロックを振り切り、抜け出る事は簡単に出来るかも知れない。

でもそれは、誰かに言われて実行するんじゃ、ダメなんだ。

だから、信じて飛ぶ前の行動に、早く気付いて･･･



日向君が所定の位置に戻り、サーブが打ち込まれる。

田中先輩がレシーブで繋ぎ、影山へ･･･

試合が始まってから何度この繋ぎを見ただろう。

小さく息を吐きながら、記録に付ける。

月「どうせまたチビに上げて失敗だな･･･田中さんだけマークしとけば･･･」

月島君がそう呟いた時･･･

日「･･･交わす！！！」

！！

日向君がさっきと違う動きをした。

それが何を意味しているのか咄嗟に判断したのか、月島君が慌て出す。

月「お前も来い！」

振り向きざまに、山口君をブロックへと呼び、自分は日向君のマークにつこうと走り出す。

日向君の俊敏さに一歩前出遅れた月島君は、ほんとに歩幅ひとつ分、追いつかない！

影山の手元にボールが繋がれる。

日向君は？！

顔を上げて、高く高く飛び上がる日向君を見る。

ほんとに何も見ないで、スパイクモーションに入っている。

この瞬間、目の前で起こっている出来事が、スローモーションのように、ゆっくり、ゆっくりと流れていく。

月島君が腕を伸ばし、日向君を阻もうとするも、届かない･･･

直後にボールは体育館を揺るがす様な音を纏い、コートの隅に吸い込まれていった。

無意識に、椅子から立ち上がった。

みんなが息を飲む音が･･･聞こえてくる気がした･･･

審判役の先輩が、ハッとしてホイッスルを響かせる。

影日「「っよしッ！！！！！」」

それに合わせ影山と日向君が、とても嬉しそうな顔で叫ぶ。

２人とも、いま、凄くいい顔してるよ。

全員が驚愕のまま、試合が継続される。

何度も失敗していた２人の連携も、荒削りながらも成功率が上がり、連続して得点出来る程までになっていた。

何気なく得点版を振り返る。

１セット先取まで、あと１点。

頑張れ！！

そう思った瞬間･･･

日「やったぁ！また当たったぁ！！！」

それを合図に１セット目を先取した。