第15章 3対3 + 1
影山の言いたいことは分かる。
誰かを信じるなんて、それも、まともに会って数日の相手を100%信じきるなんて、そうそう出来ないよ。
でも、日向君はやって見せた・・・
日「だって、いま、信じる以外の方法なんて、わっかんねーもん!!」
日向君の悲痛な声に、影山が押される。
暫し何かを考える素振りを見せ影山が日向君に歩み寄る。
影「よし、日向のスパイクが決まれば、マークが分散して田中さんも打ちやすくなる・・・俺達には信頼関係なんて微塵もないが・・・」
影「次もボールは俺が持っていく。・・・信じて飛べ!」
影山の言葉に、日向君はうなづいた。
それぞれが配置に戻り、試合が再開される。
さっき見せた2人のスーパープレイも、期待に答えることなく、空振りが多くなり、日向君の手にボールが触れても、自チームの得点になるほどの出来映えにはならなかった。
ボールに手が触れればいいものの、日向君は顔面にトスを浴びることもあった。
縁「あー、さっきのはマグレだったのかなぁ」
縁下先輩が月島チームの得点を捲りながら呟いた。
確かにそう思われても仕方ない。
でも・・・
菅「でも、確実にトスの精度は上がってきてる」
縁「そうですかね?」
菅「うん」
菅原先輩が腕を組んで、コートを見ながらもそう言った。
ボールを一切見ず、スパイクする為に飛び込んで来る日向君の手元にトスを上げる・・・
そんな針の穴に通す様なコントロールを強いられている影山の精神的疲労は計り知れない。
なのに、どういうわけか・・・影山は生き生きとした表情を見せている。
日「何ニヤニヤしてんだよ!ふざけんな!顔面2回目だぞ!!」
そんなやり取りをしている2人を、ネットの向こう側から月島君が険しい顔をして見ていた。
月「理解不能・・・。さっきのはマグレだろ?なのに懲りずに何回も」
澤「でも多分、日向はまた、何回でもボールを見ないで飛ぶんじゃないかなぁ」
月島君のボヤく言葉に、澤村先輩が反応する。
澤「確かに理解不能だよなぁ、他人を100%信じるなんて、そう出来る事じゃないもんな?しかも、因縁の相手なのにな」
納得いかない顔のまま、月島君は黙り込んだ。
日「クッソー、うまくいかねぇなぁ」
顔面トスを受けた頬を擦りながら、日向君がポツリとこぼしていた。