第15章 3対3 + 1
2回目も、3回目も、同じ様に空振りしてはボールは虚しく落ちていった。
影「おいっ!何してる!もっと早っ!・・・チッ!」
影山が怒りかけて、でも、自制する。
月「出たぁ、王様のトス!」
月島君はさっきの事など忘れたかのように、また影山を揺さぶりニヤリと笑っていた。
影「最初から、上手く行くわけないだろ」
苛立ちを隠しながらも、影山はそう呟いていた。
菅「影山、それじゃ中学の時と同じだろ?日向には技術も経験もない。でも、素材はピカイチ。お前の腕があったら、こう~、なんか、上手いこと使ってやれんじゃないかなぁ?」
見兼ねた菅原先輩が、ボールを広いながら間に入る。
影「日向には反射もスピードも、ついでにバネもある、だから、」
そう言って返す影山にボールを手渡しながら、菅原先輩が静かに続ける。
菅「技術もあって、やる気もありすぎるくらいあって・・・何より、周りを見る優れた目を持ってるお前に・・・仲間の事が見えないはずがない!」
そう言って菅原先輩は、踵を返しコートの外に戻ってきた。
その言葉を受けた影山は、暫く難しい顔で何かを考えていたけど、くるりと日向君の方を向いて真っ直ぐに見た。
影「おい、俺はお前の運動神経が羨ましい。だから、お前の運動能力全部、俺が使ってやる!お前の一番のスピード、一番のジャンプで飛べ!ボールは、俺がもっていく!」
影山が言うと、日向君は首をかしげた。
日「持って行くって、それってどういうこと?」
影「お前はブロックのいない所に全力で飛べ。
それで全力でフルスイングだ。俺のトスは見なくていい!ボールにも合わせなくていい!」
日「はぁ?!それじゃ空ブルじゃん!」
影「かもな!!でも・・・やってみたい・・・」
日向君は影山の話すことを受け入れ、
日「わかった」
と、ひと言返事をすると大きく深呼吸をしながら位置についた。
月「王様の自己中トスなんて、誰も打てないって」
山「だよね~?」
煽ってくる2人の言葉に惑わされることなく、2人は今日初めて見せる真剣な顔つきになる。
2人の真剣さが、物凄く重く伝わってくる。
田中先輩ですら、2人が纏う空気に飲まれそうになっている。
凄い・・・集中力・・・
ピリピリとした影山のオーラが伝わってくる。
私は、呼吸をする事も許されない、そんな雰囲気に流されそうになる。